(写真はイメージです/PIXTA)

6月10日公表の英国雇用統計で、労働市場の複雑な状況が明らかになりました。賃金は前年比5%台の高い伸びを維持する一方、給与所得者数は7ヵ月連続で減少し、失業率も上昇しています。賃金と雇用の間に生じている「ねじれ」の背景についてみていきましょう。本稿では、ニッセイ基礎研究所の高山武士氏が、英国経済の実態について詳しく解説します。

結果の詳細:給与所得者数が大幅減少

まず5月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数が25年3-5月の平均で73.6万件となった。4ヵ月連続の80万人割れで減少傾向が続いている(図表3)。なお、4月単月の求人数は72.0万件だった5

 

出所:ONSのデータをDatastreamより取得
[図表3]求人数の変化(要因分解) 出所:ONSのデータをDatastreamより取得

 

給与所得者データは、5月の給与所得者数(速報値、ONSは5月のデータ集計タイミングが例月より早いと注意喚起している)が前月差で10.9万人減となり、となり7ヵ月連続での減少となった(なお、過去の数値の改定は4月▲3.3→▲5.5万人、3月▲4.7→▲3.5万人)。産業別には卸・小売業、保健・社会事業サービス、居住・飲食、建設業、製造業と幅広い業種で減少した。5月の給与額(中央値)伸び率は前年同月比5.8%となり4月(6.2%、改定前は6.4%)から低下した。

 

出所:ONS
[図表4]給与所得者データの推移 出所:ONS

 

労働力調査ベースの数値は、1-3月期の失業率で4.6%となり、前期の4.5%からやや上昇した(前掲図表1)。就業者と失業者が増加し、非労働力人口が減少した。労働参加率は63.5%で緩やかだが上昇基調にある。

 

労働時間は31.8時間(前年差▲0.1時間)、フルタイム労働者で36.4時間(同▲0.1時間)となった(前掲図表2)。名目賃金は前年比で5.3%となり、前月(5.6%)からやや低下した。ボーナスを除く定期賃金伸び率は前年比5.2%と前月(5.5%)から低下、市場予想(5.3%)も下回った。同数値を3ヵ月前比年率で見た賃金上昇の勢いは4.7%(前月5.0%)と減速、5%を下回った。なお、民間部門の賃金上昇率が前年比5.3%(前月5.5%、ボーナス除きは5.1%)、公的部門が同5.5%(前月5.4%、ボーナス除きは5.6%)で民間部門の伸びは低下、公的部門はわずかだが上昇し、民間部門を上回った(図表5)。実質ベースの伸び率は、ボーナス含みで前年比1.5%(前月1.9%)、ボーナスを除きで同1.4%(前月1.8%)といずれも減速した。

 

出所:ONS
[図表5]賃金上昇率(ボーナス含む)の推移 出所:ONS

 

処遇改善を求めたストライキは、4月は件数ベースで51件(3月55件)、労働損失日数で4.7万日(3月5.5万日)となっており、低水準での推移が続いている(図表6)。

 

出所:ONS
[図表6]英国の労働争議件数と労働損失日数 出所:ONS

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5 3ヵ月平均のデータは季節調整値だが、単月データは未季節調整値のため季節性が除去されていないため留意が必要。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2025年6月11日に公開したレポートを転載したものです。

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