(写真はイメージです/PIXTA)

6月10日公表の英国雇用統計で、労働市場の複雑な状況が明らかになりました。賃金は前年比5%台の高い伸びを維持する一方、給与所得者数は7ヵ月連続で減少し、失業率も上昇しています。賃金と雇用の間に生じている「ねじれ」の背景についてみていきましょう。本稿では、ニッセイ基礎研究所の高山武士氏が、英国経済の実態について詳しく解説します。

結果の概要:週平均賃金は低下したが前年比5%台が継続

6月10日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった1

 

【5月】

・失業保険申請件数2は前月(170.19万件)から3.31万件増の173.5万件となった(図表1)。

・申請件数の雇用者数に対する割合は4.5%となり、前月(同4.4%)からやや上昇した。

・給与所得者数3は前月(3028.4万人)から10.9万人減の3017.5万人となった。増減数は前月(▲5.5万人)から減少幅が拡大し、市場予想4(▲2.0万人)を大幅に下回った。

 

【4月(25年2-4月の3ヵ月平均)】

・失業率は4.6%で前月(4.5%)からやや上昇、市場予想(4.6%)と一致した(図表1)。

・就業者は3,401.1万人で3ヵ月前の3,392.2万人から8.9万人増加した。増減数は市場予想(4.0万人)を上回り、前月(11.2万人)から拡大した。

・週平均賃金は前年比5.3%で前月(5.5%)から低下、市場予想(5.5%)を下回った(図表2)。

 

出所:ONSのデータをDatastreamより取得
[図表1]英国の失業保険申請件数、失業率 出所:ONSのデータをDatastreamより取得

 

出所:Datastream、ONS
[図表2]賃金・労働時間の推移 出所:Datastream、ONS

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1 労働力調査ベースの統計については、回答率の低下を受け、ONSでは開発中の公式統計という位置付けで公表されている。

2 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurancecredits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは開発中の公式統計という位置付けで公表している。

3 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは約85%のデータから推計。

4 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2025年6月11日に公開したレポートを転載したものです。

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