(※写真はイメージです/PIXTA)

50代の茜さんは、法的な親子関係のなかった和恵さん(80代)と養子縁組を結び、同居しながら晩年を支えてきました。病院の付き添いや看取りまで寄り添い続け、3カ月前の和恵さんの死後も、葬儀や納骨を希望どおりに取り仕切りました。ようやく一段落ついた今、茜さんが相談に訪れたのは、「これからの相続手続きをどう進めるべきか」についてでした。養子縁組や同居、小規模宅地等の特例など、制度を正しく理解し活用することで、大きな節税効果も期待できます。今回のケースをもとに、相続実務士・曽根惠子氏(株式会社夢相続 代表取締役)が解説します。

養親が亡くなり、相続手続きが必要に

相談に来られた茜さん(50代)は、法的な親子関係のない和恵さん(80代)と養子縁組をし、同居しながら和恵さんの老後を支えてきました。日常生活のサポートはもちろんのこと、通院の付き添いや看取りに至るまで、ずっとそばで寄り添ってきたといいます。
和恵さんが3カ月前に亡くなり、葬儀や納骨といった手配も、和恵さんの希望通りに茜さんが引き受けて行い、ようやく一段落ついたところでした。今回のご相談は、「これから相続の手続きをどう進めればよいか」というものでした。 


養子縁組は「家族として託す」法的手段

茜さんのお話では、和恵さんとは、ある会のイベントを通じて知り合い、何度かお会いするうちに信頼関係ができ、徐々に個人的なことを相談されるようになったと言います。

 

和恵さんは当時、80歳になられたばかりでしたが、すでに夫を亡くして子どもにも恵まれなかったので1人暮らしをされていました。頼るきょうだいや親族もないため、信頼できる茜さんの存在は心の拠り所となっていったようです。

 

和恵さんには夫から相続した自宅マンションや賃貸マンション、預金などがあり、その財産を託す方法も模索されていたようです。

 

和恵さんは遺言書を考えていましたが、「それでも不安が残る。確実に茜さんに財産を渡したい」との思いから、法的に親子関係となる「養子」になってもらえないかという申し出が和恵さんからあったといいます。

 

養子縁組しても姓は変わらない

茜さんは結婚して夫の戸籍に入っていて、夫の姓を名乗っています。2人の子どもにも恵まれて生活しています。そうした場合、和恵さんの希望を叶えてあげるために養子縁組をした場合、夫や子供に影響があるのかが不安になり、調べてみたと言います。

 

しかし、結婚して夫の姓を名乗っている女性が、養子縁組した場合、養親の姓を名乗る必要はなく、姓は変えなくてもいいことがわかりました。

 

民法では、養子縁組をした場合、原則として「養親の氏(姓)」を称することになります(民法810条)。しかし、女性がすでに婚姻によって夫の姓になっている場合は、婚姻中であれば婚姻による姓が優先され、養子縁組による氏の変更は生じません。

つまり、

  • 女性が結婚して夫の姓を名乗っている状態で、
  • その後、別の人(たとえば親族や血縁でない人)の養子となっても、姓は婚姻による姓(夫の姓)のまま維持されます。

 

そして、和恵さんとの関係は茜さんだけなので、夫や子供は養子縁組する必要がないのかも確認したと言います。結果、養子縁組は個人単位の法律行為であり、配偶者やその子どもも同時に養子になる必要はありません。

 

ただし、次の点には注意が必要です:

  • 未成年者が養子になる場合は、配偶者の同意が必要ですが、成人女性には該当しません。
  • 夫婦のどちらか一方が養子縁組しても、もう一方には相続権や法律上の関係は生じません。

たとえば:

  • 茜さんが和恵さん(高齢の方など)と養子縁組した場合、茜さんは和恵さんの法定相続人になります。
  • しかし、茜さんの夫は養子縁組をしていないので、和恵さんとは何の法的関係もなく、相続権もありません。

こうしたことを確認して、茜さんの夫や子供の理解のもと、和恵さんと養子縁組をして、茜さんと和恵さんは、戸籍上の「親子」となりました。この養子縁組が、後の相続手続きと節税の大きなポイントとなります。

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