息子の決意…「どこまでやってあげるべきか」親の苦悩
「どうしても行きたい業界があって、そこしか受けてこなかった。でも全部落ちた。秋採用はほとんどないから、来年またチャレンジするために就職留年させてほしい」
そう電話口で話す息子に、Aさんは言葉を失いました。「まさか大学4年で終わらないなんて……」。
そう思ったのも無理はありません。これまででさえ家計はギリギリ。下の娘の進学も控える中、これ以上息子のためにお金を捻出するのは難しい現実がありました。
息子が志望する業界は非常に狭き門だといいます。業界を変えて受ければ、あの子だったら就職できるはず。それでも、「無理に就職して後悔する人生になるなら、もう1回頑張ったほうがいいのか」と葛藤したAさん。悩んだ末、息子にこう伝えました。
「2つ下の妹の進学費用もあるし、もうお前に使えるお金は残っていない。来年まで粘っても、希望のところに就職できる保証もないだろう。どこでもいいとは言わないけれど、秋採用で他の業界を受けてみるのもいいんじゃないか? それでもチャレンジしたいなら、自分でアルバイトして生活費も大学の在籍費も稼ぎなさい」
そして、自分たちがどれほど節約し、支えてきたかも、この時初めて話しました。
「私の小遣いなんて、月2万円ですよ。でも、親の懐事情なんて、分かってなかったんでしょうね。奨学金を借りてることさえ、あの子にとっては『みんなそうしてる』程度の認識だったと思います」
Aさんは、それでも就職留年したいのか、諦めて秋採用で別の業界を受ける方法もあるのではないか。そう確認しました。
息子は最終的に就職留年を決断し、再び春採用にチャレンジ。“大学5年生”となった1年間は、大学に籍を置くための費用を自分で支払い、生活費の大半もアルバイトと節約で賄いました。
「なんだかんだ心配で、多少の生活費の援助はしましたけどね。でも、かなり頑張ってやりくりしていたようです。就職は結局、第一志望ではなく、第二希望の業界の会社に決まったんですが、本人は『やり切った』って。あの子にとっては挫折だったかもしれませんが、納得できたならよかったですよ」
Aさんは、振り返ってそう笑います。下の娘は地元の国立大学を選択したことで、想定よりも教育費の負担が減り、今は自分たちの老後資金作りに注力しているといいます。
「自分たちの老後のお金を、ようやく本格的に貯め始めているところ。65歳までどれだけ貯められるか……贅沢なんてしてられません。まだまだ小遣い2万円で頑張りますよ」
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