「祖母は、3億円を相続していたんです」
都内で会社員として働く水野直人さん(仮名・32歳)。祖母・澄子さん(仮名)が亡くなったのは昨年の夏。葬儀のあと、親族が集まって遺品整理をしていたときのことでした。
「母から、祖母は15年前に祖父の死後、3億円を相続していたと聞かされて。マンションも複数持っていたし、“相続税を払った”と言っていたのを覚えていたので、納得しました」
しかし、実際に遺品の整理が進むにつれ、直人さんの表情は徐々に曇っていきます。
「家にあった通帳は全部で4冊。どれも残高は数千円から、多くても数十万円でした。証券口座も、最新の取引は数年前で止まっていたんです」
澄子さんの遺言により、銀行の貸金庫も開けることになりました。
「宝石や現金が出てくるのかと思っていました。けど、入っていたのは、まさかの“手書きの領収書の束”と“未使用のブランド品”でした」
中でも目を引いたのは、30冊近くの「不動産関連契約書」。しかし、不動産登記を確認すると――
「祖母が所有していた物件のほとんどは、すでに10年前に売却されていて、しかもかなりの安値でした。中には、本人の判断能力が低下していた時期に、第三者の関与のもとで名義が移転していたとみられるものもありました」
不審に思った直人さんは、司法書士に相談。そこで明らかになったのは「認知症による判断能力の低下と、周囲の介入」でした。
「祖母は、祖父の死後すぐに資産の一部を、信頼していた知人名義の法人に売却していました。その法人は現在すでに清算済みで、条件面を見ても、祖母にとって有利とは言えない取引だったといいます」
司法書士によると、祖母は当時、資産管理をほぼ一人で行っており、周囲に相談できる家族や専門家がいない状態だったといいます。
また、通帳の入出金履歴を取り寄せると、高額な振込が頻繁に行われていた痕跡も。
「おそらく“よく分からないまま”資産が減っていったんだと思います。母は何度か注意したらしいですが、“大丈夫”の一点張りで…」
