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老朽化が気になり始めた築25年の家
「この家も、もう25年になるのね……」
長野県で夫(70歳)と2人暮らしをする美奈子さん(68歳・仮名)は、築25年を迎えた一戸建てを前に、そうつぶやきました。家は2000年に建てたもの。これまで大きな不具合はありませんでしたが、最近は水回りの老朽化が気になり始めていました。
年金収入は夫婦合わせて月25万円。金融資産は約3,000万円ありますが、物価高やインフレの進行を考えると、決して「悠々自適」と言えるほどの余裕があるわけではありません。
それでも「この家でできるだけ長く、無理なく暮らしたい」。そう考え、水回りを中心としたリフォームに踏み切りました。
きっかけは、神奈川県で一人暮らしをしている長女(38歳)の一言でした。
「お母さん、もう無理しなくていいんだよ。せっかく直すなら、食洗機も入れなよ。うちも賃貸だけれど、食洗機がない生活なんて考えられないよ」
「楽をするな」夫の一喝に、黙るしかなかった
美奈子さんにとって、食洗機は「贅沢」ではなく、「体を守るための道具」でした。
長野の冬は厳しく、台所に立つだけでも体にこたえます。年齢を重ねるにつれ、家事の負担は確実に重くなっていました。
ところが、その希望を夫に伝えた途端、返ってきたのが冒頭の言葉でした。
「洗い物くらい、自分でやれ。楽をするな」
声を荒らげる夫を前に、美奈子さんは何も言えませんでした。
「私が我慢すればいいのね。そうすればうまく回るんだから」
そう思い、口をつぐんだといいます。長年連れ添ってきた中で、「家のことは妻がやるもの」という夫の考えが変わらないことは、分かっていました。
距離のあった“嫁”が、まさかの反論
その場の空気を一変させたのは、意外な人物でした。
東京で働く40歳の息子の妻、つまり“嫁”です。35歳で、都内でバリバリ働くいています。長女とは年が近いこともあって気が合うらしく、都内でちょこちょこ会っているそうですが、美奈子さんとは決して近い関係ではありませんでした。
年末に息子と一緒に帰省していた嫁が、夫に向かってこう言ったのです。
「お父さん、お母さんを、長野の寒い冬にずっと洗い物させる気ですか?」
一瞬、部屋が静まり返りました。
「私だって、将来この家に住むことになるかもしれません。食洗機は必須です」さらに続けて、「便利なものを使うのは、怠けじゃありません。体を守るための選択です」
夫は言葉を失い、戸惑った表情を浮かべていました。
40歳息子の“援護射撃”
追い打ちをかけたのは、息子でした。
「うちも3年前、中古マンションをリフォームしただろ。共働き夫婦にとって、食洗機は必須だよ」
そう言って、夫を見ながら続けました。
「親父はすべて母さん任せで台所に入ったことがないからわかんないんだよ。塩が置いてある場所さえわからないだろ? 母さんが体を壊したらどうするつもり? とにかく食洗機は一度使ってみたら、便利さに驚くと思う」
息子の言葉に、夫は思わず黙り込みました。
「俺が……古い考えなのか?」
そうつぶやいた夫の声は、どこか弱々しかったといいます。
「同居は言葉のあやです」それでも救われた気持ち
その日の夜、美奈子さんは嫁にそっと聞きました。
「将来、同居するって、本当なの?」
「やだな、あれは言葉のあやですよ」と嫁は悪びれもせずキッパリ。そしてこう続けました「加奈ちゃん(美奈子さんの娘)もいるし、長男が家を継ぐって決まっているわけじゃないですね。まあ、そこは話し合いだと思います。でも、要は“伝え方”ですよ」
そう言って笑った嫁の言葉に、美奈子さんは少し拍子抜けしたといいます。これまで、言い方がきつく感じられて距離を感じていた相手でしたが、そのときは不思議と素直に腹に落ちました。
「ああ、時代は変わっているんだなって思いました」
その話を美奈子さんから早速聞いた加奈さんも笑いながら言いました。
「さすがね、あのお父さんを黙らせるなんて」
