アメリカ人初のローマ教皇に「確定申告義務」?…アメリカ市民なら避けられない税制の落とし穴【国際税理士が解説】

アメリカ人初のローマ教皇に「確定申告義務」?…アメリカ市民なら避けられない税制の落とし穴【国際税理士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

今年5月のコンクラーベ(新しいローマ教皇を決める選挙)の結果、初めてアメリカ人がローマ教皇になったというニュースは、世界各国のメディアの注目を集めました。この歴史的出来事の陰で、国際的な税制の矛盾と複雑さが改めて注目を集めています。アメリカの税法では、市民権を持つ者は全世界所得を対象に確定申告を行う義務があり、その対象に教皇のような宗教的権威者も例外ではないという見解が存在します。さらに、外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)に基づく報告義務が、バチカンの金融機関にも波及する可能性があるとして、専門家や各国メディアが議論を呼んでいます。

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「アメリカ人」である新ローマ教皇に課せられた確定申告

アメリカの所得税制には、日本と異なり「アメリカ市民(グリーンカード保持者を含む)は、世界のどこに住んでいても、たとえ非居住者であっても毎年IRS(内国歳入庁)に確定申告をしなければならない」という規定があります。

 

今年5月のコンクラーベ(新しいローマ教皇を決める選挙)の結果、史上初めてアメリカ人がローマ教皇に選出されたというニュースは、世界中のメディアの注目を集めました。そして最近では、『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』や『フィナンシャル・タイムズ』などの経済メディアにおいて、「教皇がアメリカ市民である場合、アメリカでの確定申告が必要なのではないか」という議論が巻き起こっています。

 

というのも、アメリカの税法では、ローマ教皇や外国政府の要人であっても、例外なくIRSへの申告・納税義務があるとされているためです。

 

実際に過去には、イギリスのボリス・ジョンソン元首相が、アメリカ市民であった時期に英国で最初に購入した家を売却した際、英国では非課税でも、アメリカでは課税対象とされ、IRSからキャピタルゲイン課税の申告・納税を求められたという前例があります。

 

ジョンソン氏は、両親の仕事の都合でアメリカで生まれ、幼少期に英国に戻りましたが、当時はアメリカ市民権を保持していたため、IRSから追及されたのです。

 

彼は「英国に住んでおり、英国で課税されないのにアメリカで課税されるのは理不尽だ」と主張したものの、最終的にはIRSに申告・納税せざるを得なかったとされています。

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