米国不動産で今も「節税できる人」と「できない人」の決定的差…“4年償却”の終焉後、税務当局を納得させる唯一の方法【国際税理士が解説】

米国不動産で今も「節税できる人」と「できない人」の決定的差…“4年償却”の終焉後、税務当局を納得させる唯一の方法【国際税理士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

記録的な円安が続くなか、資産防衛の観点から海外不動産、特に安定資産とされるアメリカの物件に再び注目が集まっています。しかし、富裕層の間でかつて大流行した「米国中古住宅の4年償却スキーム」は2020年度の税制改正で封じられており、「もはや節税目的での海外不動産投資は終わった」と考える向きも少なくありません。果たして本当にそうなのでしょうか。本記事では、この問題の根幹にある税制改正の真意と、現在でも合法的に節税を可能にする新たな手法について、国際税理士の奥村眞吾氏が解説します。

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米国中古住宅での節税はまだ可能か

かつて、日本の高額所得者層のあいだで、アメリカの中古木造住宅を利用した節税スキームが注目を集めていました。特に築22年を超えた物件を取得し、日本の税法上の簡便法を用いてわずか4年で減価償却するという手法です。

 

たとえば、乾燥した気候のロサンゼルスなどでは築100年を超える木造家屋も珍しくなく、富裕層が多く住むエリアでは物件価格が数億円に達することも普通です。

 

仮に2億円の賃貸用物件を購入した場合、4年で償却すると年間5,000万円もの減価償却費を計上できました。この不動産所得上の赤字(マイナス5,000万円)を、日本国内での給与所得など他の所得と損益通算するのです。年収1億円の人であれば課税所得は5,000万円に圧縮され、所得税・住民税率が最大55%であることを考えると、実に年間2,750万円もの税負担を軽減できる計算でした。

 

この方法は一部で積極的に活用されましたが、やがて10億円規模といった極端なケースも現れ、多額の還付金を受ける事例が目立つようになります。この状況を問題視した税務当局は、ついに規制に乗り出しました。

 

2020年度税制改正によるルールの変更

結果として、2020年度の税制改正により、海外の中古不動産に対して簡便法を用いた4年償却は封じられました。これにより、海外の建物については、原則として法定耐用年数(木造住宅なら22年)で償却することになったのです。

節税の道は完全に閉ざされたのか

では、海外中古不動産を利用した節税は完全に不可能になったのでしょうか。実は、そうではありません。現在でも、税法への深い理解に基づいた対策を講じることで、税負担を最適化している投資家は存在します。

 

その鍵となるのが、2020年度の税制改正です。

 

この改正によって、いわゆる「4年償却スキーム」は見直されることとなりました。具体的には、租税特別措置法第41条の4の3で「耐用年数は財務省令で定める方法により算定する」と規定。その「財務省令で定める方法」として、租税特別措置法施行規則第18条の24の21項が新設されたのです。

 

この規定を要約すると、「海外の物件であっても、その資産価値を客観的に証明できる書類があれば、実態に即した短い耐用年数で減価償却できる可能性がある」というものです。具体的には、以下のような書類が有効とされています。

 

1.その物件がある国の法令に基づく耐用年数に相当する年数で計算していることを明らかにする書類

 

2.現地の不動産鑑定士など、資格を持つ専門家がその建物の「使用可能期間」を見積もり、それを証明する書類

 

つまり、ビバリーヒルズの中古住宅を購入した際に、カリフォルニア州の不動産鑑定士に適正な評価を依頼し、「この建物の経済的な価値が維持される期間(使用可能期間)は〇年です」という鑑定書を取得できれば、それを根拠に法定耐用年数よりも短い期間での償却が認められる可能性があるのです。

専門家選びの重要性

このように、節税策は極めて専門的な知識を要します。特に海外が絡む案件では、今回触れたような法律の条文を正確に読み解き、適切なアドバイスができる税理士のような専門家への相談が不可欠です。

 

しかし残念ながら、多くの人が雑誌やインターネット上の二次情報だけで判断しがちです。税法のような専門分野では、根拠となる一次情報(条文そのもの)を確認しない限り、本質的な理解は得られません。

 

医師や弁護士、そして税理士といった専門家の選択は、資産形成、ひいては人生の重要な局面を左右しかねないということを、肝に銘じておくべきでしょう。

 

 

税理士法人奥村会計事務所 代表

奥村眞吾

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