「地味な暮らし」と思っていたのに、なぜか羨ましい
ここでAさんは、漠然とした不安とともに「この生活を続けていていいんだろうか」という気持ちを抱えるようになりました。
そんなとき、大学時代の友人・Bさんから久しぶりにLINEが届きます。サークル仲間で気の合った友人でしたが、卒業後は地元の企業に就職し、ここ数年は交流も途絶えていました。誘われるまま再会した週末、Aさんは久しぶりに肩の力を抜いて人と話すことができました。
再会したBさんは、地方の中堅メーカーに勤め、早々に結婚して郊外に一戸建てを購入。子育てと家計を夫婦で支え合いながら、計画的に暮らしている様子でした。
Aさんが今の仕事の話をすれば、「さすが俺たちの代の出世頭」「服も時計もすごいもんな、本物の勝ち組だよ」そう褒めたたえられ、悪い気はしません。
「俺の方は、家も買ったし先々の貯金もあるし、小遣い3万円だよ」と笑って話すBさんに、以前のAさんなら「自分とは違う世界に生きている」と感じていたはずです。実際、SNSでもBさんがするのは生活感あふれる投稿ばかりで、派手さや華やかさとは無縁の暮らしでした。
ところがその日、Bさんの言葉や表情、暮らしぶりからにじみ出る安定感と満足感に、Aさんは羨ましさを感じました。自分の生活は、華やかだけれど不安定。高級な物に囲まれていても、心は落ち着かない。自分は本当に「豊か」と言えるのだろうか──。
