娘から放たれた悪意のない言葉…「やっぱり働きます」
退職後の生活は、それまでとはまったく違う毎日でした。平日は娘の送り迎えをし、料理をし、空いた時間には株のチェックにサブスクで映画三昧──かつて想像すらできなかった日常です。
しかし、そんな生活を送ること数ヵ月。9歳の娘が何気なくつぶやいた言葉が、Aさんの胸に突き刺さります。
「お友だちにパパの仕事なに?って聞かれたけど、分からなかった。いつも家にいるって言ったら『ムショク』って言われたけど、そうなの?」
悪意はなかったそのひと言。しかしAさんは大きな衝撃を受けます。
確かに金銭的には今のところ問題はありません。しかし、「これが娘にとって、いい父親の姿なのか? 娘が学校・塾・習い事で忙しい中、在宅ワークをするでもない、無職でい続ける父親を尊敬できるのだろうか……」そう悩んだAさん。妻に相談すると、妻は「そう思うなら外で働いたら?」と言ってきたそう。
「妻はFIREに理解はあったけれど、自分のパートは辞めなかった。家庭と仕事、両方に居場所があるほうがいいって。僕のFIREも、いずれまた働きたいと思うだろうと思っていたみたいです」
Aさんは「家族に誇れる自分でありたい」という気持ちから、再び働く決意をしました。しかし、資産という下支えがあることで、仕事選びは大きく変化したといいます。
「条件は3つ。家から近い、定時で帰れる、有給が取りやすい。その代わり高収入は求めていません。前職のツテで仕事が決まりましたが、人事担当者に少し驚かれましたけどね。娘さんいるのに稼がなくていいの?って」
さらに、こう付け加えます。
「やっぱり仕事とストレスは完全には切り離せませんが、働くことで社会的な繋がりも増えますしね。まだ完全なリタイアには早かったということがわかりました。一度辞めてみて良かったと思っています」
家庭と仕事のバランスがとれたちょうどいい働き方を手に入れたAさん。娘が独り立ちするまでは仕事を続けたいと言います。
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