両親と同居する跡継ぎ
詩子さん(69歳)から相談がありました。詩子さんの父親は300坪の土地を持つ資産家。昭和40年代から貸家を建てて賃貸事業をしてこられました。詩子さんは三姉妹の長女で、幼いころから家の跡継ぎになるようにと言われて育ってきました。
妹たち2人もそれに異論はなく、2人とも嫁いで家を離れています。
詩子さんも結婚して父親の持つ敷地内に家を建てて同居生活を始めました。2人の子どもに恵まれましたが、夫と両親の折り合いが悪く、子どもたちが小学校に入る前に離婚。当然、子ども2人は詩子さんが育てたと言います。
結果、詩子さんは一度も実家を離れることなく、両親と同居して、両親を看取ってきたのです。
土地を生かして賃貸事業
最寄駅から徒歩10分の閑静な住宅地にある土地です。父親の始めた賃貸事業は母親も一緒に運営して、家賃を集金に行ったり、清掃を行ったりと好調でしたが、築年数が経ち、空き家も出てきたため、詩子さんが中心になって計画し、父親の相続税の節税対策として敷地の6割ほどの土地に3階建てRC造の賃貸マンションを建てることにしました。
事業費1億7,000万円を銀行から借り入れ、1R~1LDK13世帯の賃貸マンションができあがり、新たな賃貸事業がスタートしました。
父親の相続税はかからず、賃貸事業も成功
マンションを建ててから数年して父親が亡くなりましたが、借り入れのマイナスが効果的で、相続税はかかりませんでした。父親の相続のときに自宅と賃貸マンションの土地、建物は母親ではなく、詩子さん名義にしましたので、いよいよ詩子さんの賃貸事業となったのです。
賃貸事業の収支は下記のとおりで、相続税を節税しながら、家賃収入を得ることができ、借入返済と固定資産税、所得税などの納税後の手取りは家賃の30%以上の年間600万円程あります。賃貸事業も成功していると言えます。
1人暮らしになって10年近く
詩子さんの両親が亡くなり、2人の娘たちは嫁いで別世帯ですので、300坪の土地に詩子さんは1人暮らしです。コロナの期間もあり、子どもたちにも頼れず、ひとりで賃貸事業を継続してきました。
賃貸マンションは入れ替わりはあるにしても、ほとんど満室。そのためにバーベキュー大会をしたり、餅つき大会をしたりと入居者ともほどよいコミュニケーションを取ってきたといいます。空室になったときのリフォームも両親がそうしてきたように全部自分で手配しています。旅行などで長期の不在にしてはいけないという意識で、賃貸業に徹してきたのでした。
しかし、詩子さんも60代の後半になり、体調が思わしくないときもあり、このペースで継続していくことに疲れてきたと言います。そうしたことを娘に話すと「自宅とマンション、全部売って楽になったほうがいい」と言われたのです。