父親が介護施設へ
浩之さん(55歳)が80代のご両親の相続のことで相談に来られました。
父親は脳梗塞で倒れて入院、その後、自力で動くのが難しくなり、認知症にもなったことから介護施設に入所してしまいました。母親は父親の介護から解放された分、元気にしていますが、1人暮らしとなりました。
子供は浩之さんと妹の2人。妹は嫁いで他県に住んでいますし、長男の浩之さんも自分で家を購入して家族と住み、両親と同居はしていません。
築40年のアパート併用住宅
父親は親から相続した土地に住んできましたが、40年前に自宅を建て替える際、土地の6割を自宅にし、4割に単身者用の賃貸住宅を建てています。
父親は会社員でしたので、母親が家賃の集金や清掃をして、夫婦で賃貸事業をしてきました。幸い、最寄り駅から徒歩5分という立地に恵まれて順調に運営でき、40年経った今でも、家賃は下がったものの満室で稼働しています。
父親は認知症。対策はできないまま
土地の評価は1億円、建物は300万円、金融資産が5,000万円あり、父親の財産は相続税の申告が必要ですが、母親が相続して配偶者の特例等を生かせば相続税の負担は減らせます。
浩之さんが気にしているのは、実家の土地をどうするか、そして妹とどう分けるかということだといいます。
建物が老朽化してくるので、すぐにでも対策に取りかかりたいところですが、父親は認知症で決断ができません。認知症になる前に民事信託契約をしておけばよかったのですが、それもないため、相続になったときに決断することになります。
最寄り駅徒歩5分の立地
母親の預金も3,000万円程あるということですが、父親の相続では、相続税の節税のために母親が相続することで納税を減らせます。合わせて母親に二次相続対策に取り組むことで次の節税も実現します。
ご自宅が最寄り駅から徒歩5分の立地は、利用価値が高いと言えますので賃貸住宅に建て替えて維持していくことが妥当だと言えますが、妹と遺産分割について合意を得ておくことが望ましいところです。
家賃が入るからと不動産を共有するときょうだいでもトラブルになりかねないため、おすすめできません。賃貸住宅は浩之さんが相続して、建築費の借入の保証人にもなるとし、妹には金融資産を渡すことかが妥当だとなります。
浩之さんと妹は特別仲が悪いというわけではないのですが、しばらく一緒にいるとお互い口論になったり、言い合ったりすることが少なくないので、不動産を共有したら揉める可能性もあるなあと浩之さんは思ったそうです。
浩之さんは、父親の相続や母親の二次相続に向けて進める方向が見えてきて、気持ちが整理できたことに少し安心した様子で帰っていきました。
相続実務士のアドバイス
●できる対策:
・土地を残すには活用することが必要。
・母親の二次相続対策を見据えて父親の相続時に方向性をつけていくのが良い。
●注意ポイント
・土地活用をする際、将来の共有にならないよう、分け方も決めて取り組むことが望ましい。
・父親が認知症になればすぐに対策に取り掛かれないので母親のときは早めに決断が必要になる。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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