土地を切り売りしてきた
間宮さん夫婦は70代。夫婦それぞれが自分の父親から相続した不動産を、ほぼ2分の1ずつの割合で共有しています。そろそろ自分たちの相続について考えたいと相談に来られました。
間宮家は戦前、祖父の時代に現在の土地を取得して開墾、農家として土地を守ってきましたが、戦後の混乱期を経て、経済的にも苦しい時代があり、少しずつ切り売りしてきたといいます。それでも、自宅と賃貸マンション、駐車場が一カ所にまとまってあり、それが間宮さん夫婦の一番の財産です。
道路側から売却して残りは旗竿地になった
間宮さんの自宅は最寄駅から徒歩5分と近く、人気のあるエリアですので、3階建て12世帯のマンションは常に満室で、賃貸事業は順調です。相続税の節税対策にと建てたものですが、築20年になり、借り入れもほとんど残っていません。
自宅とマンションの建つ土地は300坪あり、ほぼ半分ずつ利用して、ゆったりと建ててあります。ところが、道路側から切り売りしていったため、公道には5メートルしか面していない旗竿地(道路に接する部分が狭く、そこから奥に広い敷地が続く土地)になったのです。
価値があっても旗竿地は分けられない!
間宮さん夫婦は4人の子供に恵まれました。長男はご両親と同じ敷地内のマンションに住んでおり、次男も近くに暮らしています。長女と次女は、それぞれ嫁いで家庭を持っています。しかし、間宮さん夫婦の悩みは、相続になったら4人の子供たちにどう分けたらいいかということです。
金融資産はそれほど多くなく、不動産90%、現金10%という割合でした。不動産はまとまった面積があるだけに土地と建物を合わせると約6億円にもなります。特例を適用すれば相続税は何とか払えますが、課題はそれだけではありません。6億円もの評価となる価値のある不動産なのに、等分には分けられないのです。
財産をどう分ける?
道路の形状からは土地を4つに分筆できる地形ではありません。自宅と賃貸マンションの2つに分けることは可能ですが、広い自宅を維持するには賃貸マンションの収入がないと難しいと言えます。
不動産を共有し、4分の1ずつ相続する方法は、権利は等分ですが、自宅やマンションに住む人と、そうでない人では不公平感があり、トラブルになりかねないため、おすすめできないことをアドバイスしました。
不動産を管理する会社を作って家賃を分ける方法も取れなくはないのですが、不動産の半分が収益のない自宅で、その維持のために家賃を投入しなければならないことも足かせとなります。いきなり、会社の名義にすることは難しいため、代表者が不動産を相続するとなると、孫の代で、相続や賃貸事業の運営で行き詰まることは想像に難くありません。さらに迷路に入るようなことになるでしょう。
道路側から売ったのが失敗
そもそも整形地だったのが、間宮さんの代になるまでの間に、道路側から売却してしまったことが失敗だったと言えます。将来、子供たちに分けるという発想がなかったのかもしれません。
しかし、現在は平等相続の時代で、6億円であればひとり1億5,000万円の財産を相続できるとなります。仮に、不動産を1人が相続すると想定すると、他の相続人に4億5,000万円の代償金を用意しなければなりません。それは負担が大きすぎ、実現不可能だと言えます。
売却しかない
分筆も難しく、共有も課題があるとなれば、売却して換金、分けやすい財産に変えておいて、相続をしやすくするのが対策の優先順位と言わざるを得ません。間宮さんご夫婦もなんとなくそうするしかないと思ってはいたが、やはり、そうですねということを言われていました。子供たちにそれをさせるのではなく、70代の元気なうちに自分たちで決断をして、見通しをつけておくことが良いと言えます。
対策は70代で
価値のある財産だとしても、持ち続けることで家族のトラブルを引き起こすこともあります。それが想定されるのであれば、元気な70代のうちに資産組み替えをしておかれることが必要でしょう。時には形を変えたり、場所を変えたりすることも財産の持ち方だと言えます。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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