父親は70代で亡くなった
彩美さん(42歳)の父親は、70代半ばで急な病気が見つかり、わずか数週間の入院を経て亡くなってしまいました。
父親は若い頃から美容院を経営し、経営者として地道に努力を続けてきた人でした。家族旅行すら年に一度がやっとという働きぶりでしたが、定年を迎える70歳でようやくリタイア。「これからは母さんとのんびりするよ」と笑っていたそうです。
彩美さんが「これからは父ともっと話せる」と思っていた矢先、まさかの急病。何も準備ができないまま、旅立ってしまいました。
父には自宅のほかアパートや金融資産もありましたが、遺言も、節税対策も、事業承継の計画もないまま……。家族の誰もが「まさかこんなに早く」と言葉を失いました。
残されたのは母と、兄と彩美さんの3人。葬儀のあとは、気持ちの整理もつかないまま、相続の話をしなければならなくなりました。
一挙にお金が増えた
母親と兄は同居をしていますので、自宅とアパートを共有で相続しました。
兄は上場企業に勤めていて、主要都市に転勤があり、実家にいないことのほうが多かったのですが、「父さんのアパート経営は継ぐよ」と言って引き受けてくれました。
一方で彩美さんには、父とともに選んだ持ち家がありました。結婚するとき、賃貸に住もうとした彩美さん夫婦に、父が「いまは買い時だ」と言って一緒に物件を回ってくれたことは、今でも大切な思い出です。
相続ではその家と、1億円近い預金を引き継ぐことになりました。しかし、彩美さんは専業主婦。夫の収入だけでやりくりしてきた生活に突如として大金が舞い込んだことで、かえって不安が増していきました。
彩美さんが不安に思っているのは1億円近いお金を銀行に預けているだけでどうしていいかわからないことです。
このままでは増えないばかりか目減りしていきます。
とりあえずは、自分たち夫婦と2人の娘の生命保険に入ったのですが、それもよかったのか、自信がありません。
これからどうすればいいかと相談に来られました。
預金にしていても増えない 現金も活用しよう
おすすめしたのは預金ではなく、不動産として財産を持つことです。
預金は目減りすることはなくても、増えることは期待できません。使っていけば減っていくことに不安が出ます。
しかも、相続の年代になれば、現金は節税にはなりません。しかし、不動産にして賃貸しておけば時価の30%程度の評価になり、節税効果があり、しかも家賃も入ります。
アパートだと手間がかかることもありますが、分譲マンションだと管理費を払えば管理の手間はかかりません。よって、賃貸事業の経験がなくても不安なく取り組めます。
財産は娘たちに残したい
彩美さんは父親が残してくれた財産を大事にして、2人の娘に渡すのが希望と話していました。
「今すぐ渡す必要はないけれど、父が私にしてくれたように、私も何かを残してあげたいと思うんです」
そのためにも、遺言書の作成や、少しずつ不動産を増やしていく準備をしていくことが大切だとアドバイスしました。
相続実務士のアドバイス
まとまったお金が増えたのは良いことながら、銀行に預けるだけでは増えないため、残念。不動産、保険にも分散して活用してこそ、財産の価値が出ると言えます。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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