(※画像はイメージです/PIXTA)

東京・江東区、築15年のマンション。そこは、古いものと新しいもの、老舗と新興店舗、戸建てと集合住宅がモザイクのように混在する、どこにでもある住宅街だ。しかし、その一室は「どこにもない」壮絶な現実を抱えていた――。株式会社TBH不動産代表取締役の柏原健太郎氏が実情を紐解いていく。

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日常風景に潜む事故物件

マンションのエントランス横にはフリースペースが設けられており、ソファと観葉植物だけが置かれている。空間の広さに対して、やや寂しさを感じる。分譲当初は、レンタルのマッサージチェア3台とアクアリウムが設置されていたとのこと。平日の学校帰りには、小学生たちがソファに座り、おしゃべりをしながら宿題をしており、このひとときだけは空間に賑わいが生まれる。

 

財閥系デベロッパーによる分譲マンションで、高級志向の共用部が設けられているが、ラグジュアリー感を出したい分譲主と、無駄を少しでも省きたい住民との意向の違いが、マンションの運営に表れている。住民が積極的にマンション運営に関わっている、よい例だと思う。マンションの資産価値を下げないために、必要な投資は行いつつも、無駄は省くという、頭脳的な管理組合の意向がみてとれる。

 

二重のオートロックを抜け、エレベーターで7階へ。高級ホテルを思わせる絨毯敷きの内廊下が現れる。これは、このマンションが建てられた地域特有の気質を反映した投資なのだろう。空調、照明、そして絨毯の維持管理には、一定のコストがかかる。「こだわるところには投資するが、無駄遣いはしない」――そんな地域性が設計思想に表れているように感じられた。

 

内廊下には絨毯が敷かれているが、屋内であるためか、静けさのなかに意外と足音が響く。この足音があることで、部屋のなかにいる人が注意深く誰かを待っているのであれば、その誰かが近づいてくるのがわかるだろう。

 

廊下を進み、部屋の鍵を開けた瞬間、私は言葉を失った。 清潔感あふれる共用部から一歩踏み入れたその先は、まるで「どこでもドア」で繋がれた解体寸前の廃墟だった。

孤独死が残した爪痕…廃墟と化した部屋

床の一部は無残に剥がされ、壁紙は天井から壁面まで、すべてが力任せに引き剥がされていた。窓ガラスの枠にはビニールテープが痛々しく貼られ、室内の水分という水分はことごとく奪い去られたかのようだ。ゴキブリやウジムシ、ハエの死骸は、まるでミイラのようにカラカラに乾ききっていた。

 

家具や家財道具は一切ない。ただ、寝室だったと思われる部屋の奥に段ボール箱が一つだけあった。なかには、早くに亡くなったという妻の遺影と位牌、思い出が詰まっていそうな指輪、そして本人の財布が残されていた。

 

この部屋でなにが起きたのか? 

 

年金生活だった70代の男性が一人で暮らしていた。そして、室内で息を引き取った。発見されたのは、死後1ヵ月が経過してから。桜の便りが聞かれるよりも少し前の、まだ肌寒い季節だった。室内は特殊清掃が施された。

 

身寄りはなく、相続人はいなかった。滞納しているマンションの管理費・修繕積立金の滞納金、また、管理組合が立て替えた特殊清掃費用の支払いのため、相続財産清算人が選任され、不動産を売却して、これらの債務を支払い、残りを国庫に帰属する手続きが進められた。

 

 

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