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高級住宅街のカフェで起きた、想定外の修羅場
平日の昼下がり。都内高級住宅街にひっそりと佇む、せせらぎの音が心地よいガラス張りのカフェ。窓際では、生後数ヵ月の赤ん坊が、ぽかぽかと陽の光を浴びながら、気持ちよさそうに眠っていた。しかし、その穏やかな空気を突き破るように響き渡る怒声──。
「ふざけるなよ! この金額で売るしかないんだ!」
「督促状が来てるんだ。払わなかったあんたのせいで、こっちは迷惑してる!」
目を疑うような光景だった。店の奥の6人席で、50代から80代と思しき兄妹たちが激しく口論している。泣き出した赤ん坊をよそに、店内の空気が一瞬で凍りついた。一人、年長の男性が声を荒げる。
「もっと高く売れる場所だろ? 急いで安く売る必要なんてない!」
もともと実家で話すと感情的になりすぎるとの配慮から、周囲の目を意識できるカフェを話し合いの場に選んだはずが……。すでに収拾はつかない。感情を爆発させる兄に対し、ほかの兄妹たちは口々に詰め寄る。
「同意してよ、もう!」
「払ってないのはあなただけでしょ!」
「こっちはとっくに納めたのに!」
手が出る兄を抑えようとする妹。カフェスタッフはアルバイトが多いのか、呆然としており、止めに入る者はいない。周囲の目など、もはやなんの意味もなさない。
そう、これは“相続”が引き起こした修羅場だった。
「完納されていません」…想定外の通知がすべてを変えた
相続税の申告・納税期限は、被相続人の死亡から10ヵ月以内。6人兄妹は、税理士のサポートのもと、金融資産5億円と不動産(実家)2億円を相続し、期限内に申告を終えていた──と思っていた。だが、半年以上経過したあとに届いたのは、税務署からの「完納されていない旨等のお知らせ」という通知だった。
これは「一部の相続人が納税していない可能性があることを知らせるお知らせ」である。つまり、相続税を1人が払っていないと、ほかの全員にも責任がおよぶのだ。
