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暗く、重く、湿った空気が流れる家
「家を売ろうか悩んでいて。でも、できれば住み続けられたらと思って」
相談者の60代の女性から届いた電話は、どこか弾むような声。しかし、その軽やかさの裏には、誰にもいえない“行き詰まり”が隠れていた。
数日後、西東京市にあるその女性の実家を訪れた。築50年の木造戸建。玄関扉を開けた瞬間、ふわりと鼻をつく空気に、思わず身構える。土間には脱ぎっぱなしの靴、濡れた傘、積み重ねられたダンボール。廊下に足を踏み入れると、スリッパはなく、床板は猫の毛と埃でざらついていた。かつては磨かれていたであろうフローリングは、年月と足跡に削られ、艶を失っている。
居間に通されると、視界のあちこちに猫の気配が現れる。押入れの隙間、階段の途中、薄暗いキッチンの片隅から――合計4匹。どの猫も落ち着いてはいるが、無言でこちらをみつめていた。
カーテンは閉ざされたまま。昼間でも照明が必要なほど部屋は薄暗く、隅には埃と湿気が積もっている。まるで、時が静かに止まってしまったかのようだった。
家は、住む人の生き様を映す
不動産会社として、多くの孤独死・孤立死の現場に立ち会ってきた。そこにあるのは“物件”ではない。むしろ、そこに映し出されているのは人の生き方そのものだった。
この家もまた、彼女の人生の記憶で満たされていた。それは、決して乱れた空間ではない。ただ、彼女の人生がそこに「滞って」いた。
