(画像はイメージです/PIXTA)

M&A(企業の合併・買収)を考える際に、必ず理解しておきたいのが「事業とは何か?」という基本的な概念です。事業の構成要素を理解することで、譲渡対象の選定やスキームの選び方にも大きな影響を与えます。本記事では、FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が、M&Aの現場で頻出する「事業とは何か」「会社と事業の違い」「事業譲渡とは」などの疑問に対して詳しく解説します。

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会社と事業の違いとは?

◆M&Aにおける基本理解

M&Aでは、売買の対象が「会社」または「事業」であることが一般的です。この2つは似ているようで、本質的には異なります。

 

会社(法人):法的な“箱”であり、株主が出資し、経営者が運営する法人格

 

事業:会社が展開している“価値を生み出す仕組み”であり、経営資源の集合体

 

会社は法的な単位であり、すべての資産・負債・契約をひとまとめに保有しています。一方、事業とは、そのなかにある“利益を生み出す仕組み”そのものです。

つまり、M&Aにおいては「箱ごと」売ることもあれば、「中身だけ」を売ることもあるという点がポイントです。

M&A対象となる「事業」とは?

経営資源の構成を理解する事業とは、単なる製品やサービスの提供活動にとどまりません。実際には、「ヒト・モノ・カネ・情報」など、複数の経営資源を組み合わせた収益モデルです。それぞれの構成要素を具体的に見ていきましょう。

 

◆ヒト(人材・ノウハウ)

従業員の存在は事業の中核を成します。特に中小企業においては、従業員の持つノウハウや技術、接客スキルが事業価値そのものを形成します。

 

たとえば、ホテルや旅館業で重視される“おもてなし”のノウハウは、形式知ではなく従業員の頭の中にある暗黙知です。これが承継されなければ、サービス品質は大きく損なわれます。

 

◆モノ(設備・在庫・不動産)

製造業であれば機械や設備、物流業であれば車両や倉庫、不動産業であれば土地建物などが該当します。これらの物理的な資産は貸借対照表にも反映されやすく、譲渡時の評価に直結します。

 

◆カネ(現預金・借入金)

現預金や運転資金は、日々の事業活動を支える“血液”のような存在です。一方、借入金などの負債も含めてM&A時には議論の対象となります。

 

◆情報・無形資産(顧客リスト・ブランド・契約など)

目に見えない資産、いわゆる無形資産のなかでも重要なのが「顧客との関係性」です。長年積み上げてきた顧客リスト、CRMデータ、ロイヤルティの高いファン層などは、事業の継続に欠かせない経営資源といえます。

 

また、製造業では技術特許や製造ノウハウ、ブランド価値なども無形資産に含まれます。

現金製造機としての「事業」モデルを理解する

これらの経営資源を統合され、有機的に結びつけることで、事業は“現金製造機”として機能します。つまり、「ヒト・モノ・カネ・情報」が一体となり、毎日、チャリンチャリンと現金を生み出す仕組みになっているわけです。

 

M&Aでは、この現金製造機を壊さずに受け渡すことが最重要課題となります。たとえ優れたノウハウがあっても、従業員が離脱すればその価値は失われてしまいます。

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