債務超過でもM&Aは可能?
よくある誤解のひとつに、「赤字で債務超過の会社は売れない」というものがあります。しかし、これは必ずしも正しくありません。
たとえば、会社全体(=箱)を売却する株式譲渡では、借金や負債もすべて含めて引き渡されるため、買い手が敬遠するケースもあります。
しかし、必要な経営資源のみを選別して譲渡する事業譲渡を活用すれば、債務超過の会社であってもM&Aを成立させることは可能です。
これは例えるなら、スイーツの詰め合わせを箱ごと購入するのではなく、「イチゴだけ」「チョコだけ」と中身を選んで購入するイメージです。
株式譲渡と事業譲渡の違いをM&Aスキームから理解する
M&Aには主に以下の2つのスキームがあります。
事業譲渡では、買い手が必要とする資産だけを取得できるため、柔軟性の高いスキームといえます。特に、赤字企業や再建が必要な企業にとっては有力な選択肢となります。
M&Aを成功させるための視点:経営資源の棚卸し
M&Aを検討する経営者が最初に行うべきことは、自社の経営資源の棚卸です。ヒト・モノ・カネ・情報のそれぞれについて、以下のような点を確認しましょう。
・主力人材は誰か?引き継ぎは可能か?
・不要な資産・負債は含まれていないか?
・強みとなるノウハウや顧客リストはどこにあるか?
・ブランドや商標、契約内容はどうなっているか?
この棚卸しを通して、「何を売るか」「どう売るか」という戦略が明確になります。
事業とは経営資源の集合体であり、M&Aの売買対象そのもの
事業とは、単なる活動やサービスではなく、経営資源が有機的に結びついた「利益創出装置」です。M&Aでは、この装置をいかに壊さずに承継するかが鍵となります。
そして、赤字企業や債務超過であっても、事業譲渡というスキームを用いることでM&Aを成立させる可能性は大いにあります。
経営者として「事業の本質」を理解することが、M&Aの成否を分ける第一歩です。自社の経営資源を見つめ直し、最適な譲渡戦略を設計していきましょう。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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