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立退料の支払いを受けたうえで、立退きとなる可能性が高い
住居は生活の基礎になる重要な場所ですから突然退去を求められると困りますね。そこで、借地借家法という法律で住居の賃貸借契約を家主側から解除したり、更新を拒絶したりすることについては、かなり強い制約を設けています。
家主の側から賃貸借契約を解除したり、更新を拒絶したりする場合には、家主が建物を使用する必要、借主が建物を使用する必要、その他さまざまな事情や立退料の支払いの申出などの事情を考慮して、「正当な理由がある」と評価できることが必要になります。
複雑な書き方ですが、(1)家主が使用する必要と、借主が使用する必要、その他の事情を考慮して立退料が決まる、(2)家主がその立退料を支払えば立退きを求めることができると理解すれば大丈夫です。
(1)相談者の立退きの必要
相談の事例では、家主自身が建物を使用する必要があるため、立退料の支払いを受けるのと引き換えに立ち退くことになる可能性が高いですね。
(2)立退料の金額
立退料の金額については、さまざまな事情を考慮して判断されるため「相場」を紹介することは難しいです。一般に「賃料の半年分」といわれることがありますが、それよりもはるかに大きな金額になる場合も多いです。相談事例の家主は、1年後に定年を迎えるようですが、定年後にこのマンション以外には住む場所がないというわけではないため、直ちに明渡しを求める必要は小さいです。これは立退料を増額する要素となります。
また、相談者に小学生の子どもがいて校区内に同等の物件が少ないことは、相談者の建物使用の必要が大きいということなので、立退料を増額する要素になります。他方で、同等の物件が5万円ほど高いということは、現在の賃料が相場よりかなり安いということなので、立退料を減額する方向に考慮される可能性もあります(なお、相手方の戦術として、立退きをしないのであれば賃料を上げてほしいという交渉をされる可能性もあります)。
(3)調停の流れ
調停は話し合いの場ですが、双方が同じ部屋に入って話し合いを行うわけではなく、調停委員がそれぞれから順番に話を聞きます。
・最初に申立人(家主)が部屋に入り、家主側の主張などを調停委員に伝えます。
・次に相手方(相談者)が部屋に入り、調停委員から家主側の主張などを伝達されます。そのうえで、調停員に相談者側の主張などを伝えます。
これを2回ほど繰り返して、期日が終わります。以降は、合意が成立するまでまたは合意が不可能と判断されるまで何回か期日が繰り返されます。合意が成立すれば、和解調書が作成されます。

