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過失割合「10対0」悪いのはあっちなのに…
相談者は半年ほど前に、信号機が青点滅中に横断したところ、信号無視の自転車に衝突され、転倒しました。頸椎捻挫、打撲傷を負い、事故日から177日間通院していました。
相手は自転車保険に加入しておらず、個人賠償保険にて対応してもらうことになりました。しかし保険会社の担当者の対応が悪く、担当者の変更を依頼しましたが「できない」といわれ、代理人顧問弁護士を立てられてしまい、相談者はどう対応していくべきか悩んでいます。
相手の弁護士からは「通院を打ち切りする」と書面が届きましたが、こちらから連絡をし、1ヵ月治療を延長することで合意し、先日通院が終了しました。交通費は立て替えで約20万円かかりました。過失割合は「10対0」で、相手の弁護士もこれを認めています。
そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の3点について相談しました。
(1)このような場合、どのくらいの慰謝料になる可能性があるのか。
(2)このような場合、後遺障害の等級認定がされる可能性はあるのか。
(3)相談者が弁護士に依頼せず、自分一人で対応するリスクはなにか。
慰謝料の目安は88万円、後遺障害等級は総合判断
まず、交通事故の慰謝料については、いわゆる「自賠責基準」「任意保険基準」そして「弁護士基準(裁判所基準)」の3つがあるといわれています。
このなかで、今回のように被害者に過失がない場合は、原則として「弁護士基準(裁判所基準)」がもっとも高額になりますから、この基準を用いて慰謝料を算定することになります。「弁護士基準(裁判所基準)」にもいろいろあるのですが、最もポピュラーな、いわゆる赤い本の基準を参考にすると、今回のような頚椎捻挫等の症状で、通院期間が177日の場合、傷害慰謝料額は88万円と算定されます。
これは、後遺障害等級の有無に関係なく発生するものです。そのため、後遺障害等級が認められる場合には、別途、後遺障害慰謝料を請求することができます。さらに、逸失利益等の請求する項目が増えます。
そこで、「後遺障害の等級認定がされる可能性はあるのか」という点が大事になってきます。ただ、頚椎捻挫等の、いわゆる神経症状といわれる症状の場合、どうしても骨折や靭帯の損傷等とは異なり、ほとんどがMRI等の画像記録に現れません。このような場合は、「局部に神経症状を残すもの」として、後遺障害等級別表第2第14級9号に該当するか否かが問題となります。
もっとも、どのような状態であれば「局部に神経症状を残す」といえるのか、その基準は不明確であるため、「これがあれば認定される」といった明確なものがあるわけではありません。一般的には、後遺障害診断書の記載内容だけではなく、事故の衝撃の大きさや、通院期間・通院頻度、症状固定までの治療経過などを基に判断されているといわれています。
この点、本件では、自転車との事故ですので、どうしても、自動車と比べて衝撃の大きさは低いかもしれません。とはいえ、信号無視ということですから、そのスピードがどの程度であったのかということや、自転車が一般的なものか、それとも電気自転車なのか、相談者から見えない方向から衝突してきたのか、転倒した場所はアスファルトの路上か、といった点も大事になります。
また、通院期間は約半年ということで、十分な期間になるでしょう。あとは、通院頻度や治療経過がどのようなものであったかで、可能性が上下するかと思われます。

