(画像はイメージです/PIXTA)

在宅医療の診療報酬は、2024年に介護報酬と同時に改定されました。在宅診療において、患者が「個人宅在住者」である場合と「施設入居者」である場合とでは、その報酬は大きく異なります。本記事では、訪問診療報酬の仕組みについて、医療法人あい友会理事長の野末睦医師が経営者の視点から詳しく解説します。

〈在宅診療報酬〉算定のルール

一方で、既出の図表のとおり、往診料については720点を算定します。訪問診療における同一建物居住者以外の患者への診療が884~888点、平均886点です。これに対し約80%の点数が評価されているということになります。

 

ところが、臨時に出向く往診が同じ日に同じ施設内(有料老人ホーム等)で2人以上あった場合に、2人目以降の患者さんについて往診料を算定しないことがあります。

 

前提として、往診料には同一建物居住者の概念はなく、マンションやサービス付き高齢者向け住宅などの集合住宅においては、それぞれから往診料を算定します。一方で、有料老人ホームなどは入居者の居住空間が完全に独立していないため、同一世帯(同一患家)とみなされ、2人目以降の患者さんについては初・再診料などを算定します。

 

本制度は「たくさん診るから、1人あたりの報酬は少なくていいでしょう」という考えを基とする制度改正によって施設の入居者さんの単価は大幅に下がってしまい、個人宅の患者さんと比較すると、3分の1程となってしまいました。

 

加えて、効率よく診察したら施設の患者さんの単価を下げる、というような診療報酬改定が2024年の6月に行われたため、さらに単価は下がり、現在あい友会での売上単価は3万3,000円ほどになっていると思われます。

 

一方で、個人宅の患者さんの診療報酬はあまり変わっておらず、約10万円のままのため、施設の患者さんと個人宅の患者さんの診療報酬の差は開く一方です。

 

また、10万円や3万3,000円という金額はあくまで目安であり、採血検査、心電図などを実施した場合や、在宅酸素等の医療機器を使用する場合は別途費用がかかるほか、お亡くなりになる直前などは、さまざまな加算がつきます。よって患者さんの状態で金額は変動します。

 

いずれにしても、クリニックの運営方針を定める際に、個人宅の患者さんを中心に診療していくか、それとも施設患者さんを中心に診療していくか、どの程度の患者数を診れば採算がとれるのか、診療報酬制度の算定ルールをよく理解したうえで決定することが重要です。

 

また、診療報酬の算定ルールは2年に1度のペースで見直され、変化していきます。前回の改定(※2)で施設の患者さんの報酬が引き下げられましたが、非常に厳しい状況がつづく昨今の医療保険制度財政のことを考えると、少しでも診療報酬を下げたい、という方針は今後もつづくことが予想されます。

 

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