“リモート会議”を活用して報酬アップも…病院を退院→在宅医療に移るケースの「在宅報酬の算定ルール」について、現役訪問診療医が解説

“リモート会議”を活用して報酬アップも…病院を退院→在宅医療に移るケースの「在宅報酬の算定ルール」について、現役訪問診療医が解説
(画像はイメージです/PIXTA)

終末期医療を病院のベッドではなく、自宅で受ける在宅医療は近年注目されており、実際に訪問看護利用者数は年々増加傾向(※)にあります。需要拡大にともない訪問診療クリニックの増加が期待されますが、在宅診療報酬の算定ルールは、一般的に、その他の外来診療などと比べて複雑といわれています。そこで本記事では、病院を退院したあと在宅医療へ移行する際の診療報酬の算定と注意点について、医療法人あい友会理事長の野末睦医師が解説します。(※参考 在宅医療の現状について|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000909712.pdf)

退院調整会議の実施

まず、病院を退院する前に退院調整会議というものを実施しておくことが大切です。病院によっては退院前カンファレンス、退院調整カンファレンスと呼ばれています。事前に入院している病院と訪問診療クリニックが打ち合わせをしておくことで、スムーズに在宅医療へ移行することができます。

 

たとえば、重症の患者さんが入院していた病院からご自宅に戻るといった場合、私たちは原則、退院した日に訪問するようにしています。

 

しかし、初対面の日からいきなり、患者さんが不安を感じることなく訪問診療を行うというのはなかなか難しいことです。そのため対策として、事前に診療を引き継ぐ訪問クリニック側が病院等に出向いて、入院中の様子を見させていただき担当の医師や看護師、ご本人やご家族とお話しします。「退院したらどんな準備が必要か」ということを確認し合って引き継ぎをしっかり行うことで、患者さんの身体負担と、ご本人やご家族の不安を軽減することができます。

在宅医療へと移行する際の報酬の査定

診療報酬における算定の視点からも、こうした退院前に調整を行うカンファレンスは重要です。なぜなら、退院調整会議を開いたのちに、退院日に私たちが訪問した場合、会議の日は初診扱いとなり退院時共同指導料が発生します。そして退院日は、2回目の訪問診療(=定期訪問)という種別になります。

 

もし、退院調整会議を実施せずに退院日に訪問した場合は、定期訪問ではなく、往診扱いとなります。「訪問診療(定期訪問)か、往診か――」どちらの種別としての扱いになるかによって、算定方法は異なります。

 

訪問診療と往診の違いについて確認しましょう。事前にスケジュールを組んで、定期的かつ計画的に患者さんのお宅に出向いて行うのが訪問診療です。一方で、突然の発熱や発作などの急変により、ご本人もしくはご家族から電話などで直接求められ、お宅に出向いて行うのが往診です。

 

訪問診療(定期訪問)の初診なのか、往診なのかで、診療報酬の算定ルールが異なります。

 

診療に対する報酬としては、往診の際に発生する往診料、訪問診療の際に発生する在宅患者訪問診療料がそれぞれ発生します。どちらも、患者さんのお宅での診療に発生する診療料です。加えて、どちらも診療料と同時に管理料が発生します。この管理料は、患者さんへの総合的な医学的管理に対する管理料という建付けになります。ところがここに厳密なルールが存在します。

 

退院調整会議を実施して、退院日に実施した最初の診療が、定期訪問(=訪問診療)の2回目の扱いとなると、管理料が発生します。一方で、初回の往診では、管理料は発生しません。退院調整会議を実施しなければ、管理料を算定するタイミングを1度逃すことになります(注・管理料は1ヵ月あたりに発生するものです。)

 

事前に会議を開くことで、患者さんが入院している病院等の医師や看護師と言葉を交わすことは、患者さんに在宅医療を行ううえで大変重要です。近年はオンライン会議が浸透し、以前より気軽に実施できるようになりました、こうしたツールを積極的に活用しつつ、退院調整会議を実施することは、患者さんのためにもなりますし、私たちの収入面でも有効にはたらくのです。

 

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