13歳年上妻が急逝…年金事務所で告げられた一言に驚愕
永井さん(仮名/53歳)は地方の小さな部品メーカーで働く派遣社員。高校卒業後、何度も転職を繰り返しながら今の職場にたどりつきました。手取りは月22万円ほど。賞与はなく、満足する収入を得ているとは言えませんでした。
それでも、永井さんが生活に困ることはありませんでした。10年前に結婚した妻がいたからです。妻は中堅企業で65歳まで働いた元会社員。退職後は年金を月12万円もらいながらパートでも働き、その収入は月13万円ほど。合わせて月25万円の収入がありました。
そう、実は永井さんの妻は66歳。かなり年上でした。けれど永井さんは、その年齢差にむしろ安心感を覚えていたといいます。妻は明るくはつらつとしていて、金銭管理も得意。家計のことはすべて彼女に任せきりでした。
永井さんの給料と妻の年金、パート代を合わせて世帯収入は月40万円以上。子どものいない2人はお金の心配もあまりない、それなりに余裕のある暮らしをしていました。
しかし、そんな毎日が突然終わりを告げます。妻がくも膜下出血で倒れ、急逝したのです。朝、一緒に朝食を食べたときは元気そのものでした。けれどその日の夕方には、永井さんのもとに病院から「帰らぬ人になった」との連絡が入ったのです。
悲しみに浸る暇もないまま、葬儀の準備、死亡届の提出、金融機関への連絡と、次々と現れる手続きに追われました。
「この人、事務手続きとかが本当に苦手だから、私がなんでもやってあげるの。私が先に死ぬと思うんだけど……どうするのかしら」
生前、妻が友人たちに半分冗談・半分本気で話していたことがあったそうです。その言葉が、現実になってしまいました。
葬儀の手続きも、妻の友人たちの助けがなければ到底進められなかったといいます。その中のひとりが、こう声をかけてくれました。
「年金事務所には行った? 遺族年金の手続き、しておいた方がいいわよ」
……遺族年金。言葉くらいは知っていたものの、自分に関係あるとは考えたこともありませんでした。
まだ、妻を失った事実を受け止められないまま年金事務所を訪ね、窓口で事情を説明すると、担当職員の女性が事務的にこう告げました。
「遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類がありますが、永井さんの場合、どちらも受給対象外です」
「……え? 対象外? つまり、もらえないってことですか?」
最初は、意味がよくわからなかったという永井さん。説明を受けるうちに、ゆっくりと現実が胸にのしかかってきたといいます。