資産運用の定説「高齢者はリスクをとるな」に異議…「安全資産中心」では戦い切れない、日本のシニアが置かれた厳しい状況【経済評論家が助言】

資産運用の定説「高齢者はリスクをとるな」に異議…「安全資産中心」では戦い切れない、日本のシニアが置かれた厳しい状況【経済評論家が助言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

投資の勉強をしていると、たびたび遭遇する「定説」があります。しかし、時代の変遷とともに状況は変わっていき、老後への備えについても例外ではありません。いまの日本で老後を乗り切るには、どのような備えが必要なのでしょうか。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

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「若者はリスクが取れるが、高齢者は…」の定説に異論アリ

「若者は投資で大損をしても取り返せるが、高齢者は投資で大損したら取り返せないのだから、高齢者は安全第一の資産運用を心がけるべきだ」という人は多いです。しかし、筆者はそうは思いません。

 

筆者自身も定年退職後の高齢者ですが、老後資金に占める米国株投資信託のウエイトが高くなっています。それは、投資で儲けてリッチな老後を過ごしたいからではなく、インフレが怖いからです。

 

平均寿命より長く、あと30年くらい生きるつもりでいるので、老後資金は長いタイムスパンで考える必要があります。老後資金の多くを現金で持っていると、その間にインフレが来て目減りしてしまう(買える物の量が減ってしまう)リスクがあります。

 

今後は少子高齢化による労働力希少(労働力不足と呼ぶ人が多い)で賃金が上がっていくでしょう。そうなれば、物価も上がっていくでしょう。毎年1%の物価上昇でも、30年後には老後資金が30%も目減りしてしまうわけです。

 

30年以内に南海トラフ大地震が来る可能性も決して小さくないでしょう。そうなれば、復興資材の輸入のためにドルが値上がりし、輸入物価全体が猛烈に値上がりするはずです。

 

その点、米国株はインフレに強い資産です。日本がインフレになれば、米ドルが値上がりすることが見込まれるからです。日本がインフレになれば、海外の物が安く感じられるため、ドルを買って海外の物を輸入する人が増えるからです。米国がインフレになれば、米国企業の利益が増えて米国の株価が上がるでしょうから、やはり心配ありません。

高齢者の金融資産、「預金」に偏っているのが心配

多くの日本人高齢者は、金融資産が預金に偏っているようです。日本人の遺伝子はリスクを避けたがる性質があると聞いたことがありますし、高齢者のほうがリスクに敏感だということもあるでしょう。冒頭のようなアドバイスに従っている人もいるのでしょう。

 

バブルの頃までは「株に手を出す」などという言葉があったくらいで、株式投資はバクチだから真っ当な人間は手を出すべきではない、と考えている高齢者も多いのかもしれません。

 

一度は投資をはじめたけれど、バブル崩壊やリーマン・ショックのときに暴落で損をして、二度と投資をしない、と心に誓った人もいるのでしょう。

 

しかし、これは心配なことです。インフレが来れば現役世代は所得も上がりますが、高齢者はインフレが来ると老後資金の銀行預金が目減りするだけですから。

 

高齢者は株価の暴落も経験していますが、石油ショック時のインフレも経験しているのですから、インフレに対する備えの必要性を十分に自覚していただければ、と思います。

「年金の受給開始を先送りする」選択肢も

老後資金を多額に持っていると、株や外貨を買うべきか否か迷うのでしょうが、老後資金のもうひとつの使い方として「年金の受け取りを待つため、生活費に使う」という選択肢もあります。

 

公的年金は、長生きしても最後まで支払ってもらえて、インフレが来れば原則としてその分だけ受取額が増えるという、「長生きとインフレ」という老後資金の最大リスクにしっかり対応した心強い存在なのです。

 

公的年金は65歳から受け取り始めるのが普通ですが、受取開始を遅らせることができます。たとえば70歳から受け取り始めると、毎月の受取額が42%増えるので、老後の生活の安心感が大いに高まるわけです。

 

筆者も、老後の年金を充実させるために年金の受け取り開始を遅らせており、老後資金を少しずつ取り崩しながら生活しています。幸い、経済評論家としての収入がいまでも少しありますから、まだしばらく年金は受け取らずに我慢するつもりでいます。

老後資金だけではない…「認知症」も高齢者の懸念事項

高齢者にとっては、老後資金が足りるか否かという話に加えて、認知症になったり倒れて意思表示ができなくなったりする、というリスクも重要です。贈与税に注意しながら、ある程度の金額を子どもたちに贈与しておいて、「私が倒れたときに使ってほしい」と伝えておくという選択肢は要検討です。

 

子どもたちが自分で使ってしまう可能性を心配するなら、子ども名義の通帳を自分で保管しておき、残高が減っていないことを定期的に確認すればよいでしょう。

 

クレジットカードの家族カードを作っておく、という選択肢もあります。万が一のときには、入院や介護等の費用を家族カードで払ってもらえばよいのです。

 

その他、家族信託を検討する、子どもたちを金融機関に代理人として届けておく等々、取れる対策は多様だと思います。一度、金融機関などに相談してみてはいかがでしょうか。

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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