ありがたや…所得税が累進課税の国、ニッポンで「NISA」「iDeCo」のメリットに、改めてニッコリ【経済評論家が解説】

ありがたや…所得税が累進課税の国、ニッポンで「NISA」「iDeCo」のメリットに、改めてニッコリ【経済評論家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「貯蓄から投資へ」「貯蓄から資産形成へ」との掛け声のもと、政府が推奨しているNISA、iDeCo。「知っているけれど、取り組んでいない」という人も多いと思います。実際にどのようなメリットがあるか、改めて確認してみましょう。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

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NISAは「気楽に使える節税枠」

政府は、「貯蓄から投資へ」「貯蓄から資産形成へ」といった掛け声のもと、NISAやiDeCoという制度を設けています。NISAやiDeCoという金融商品があるわけではなく、投資優遇税制の制度の名前です。日本人の金融資産が銀行預金に偏っているので、投資を増やしてもらおう、ということなのでしょう。

 

NISAは、気楽に使える節税枠です。NISA枠内で投資した分については売却益や分配金収入などが非課税になりますから、投資をするなら活用しないのはもったいないです。昨年から制度が大幅に拡充され、年間360万円までの投資について、売却益や配当収入などが非課税になりました。

 

生涯非課税枠が1,800万円ですから、夫婦二人で3,600万円まで非課税で投資できます。金融資産1億円の「上級庶民」でも、預金6割、投資4割という分散投資が可能となるわけです(後述のiDeCoと併用)。

 

細かい制度については、金融機関に問い合わせれば懇切丁寧に教えてくれるはずです。なんといってもNISA口座による顧客の囲い込みは、金融機関の重要関心事項ですから。

 

NISAはひとつの金融機関でしか利用できません。金融機関にとっては、顧客にNISA口座を作ってもらえるか、ほかの金融機関に作られてしまうかで、長期間にわたる「大きな分かれ道」になってしまうのです。

iDeCoは「投資優遇税制」が満喫できる

もうひとつの投資優遇税制であるiDeCoは、投資できる金額の上限はそれほど大きくないものの、非常にありがたい制度です。iDeCoで投資した分については、NISAと同様に売却益や配当収入などが非課税になります。加えて、拠出額が所得税等の所得控除になるのです。

 

所得税等の計算は、所得に税率を掛け合わせて求めるのですが、その際に拠出額については「その分だけ所得が少なかったことにして計算していい」というのが所得控除です。所得税については限界税率が平均税率より高くなっていますし(後述)、住民税についても所得控除が受けられますので、このメリットは普通の人が考えているより大きいかもしれません。

 

NISAは銀行預金等には使えませんが、iDeCoは銀行預金等にも使えるので、「株式投資等は暴落リスクが怖いので避けたいが、所得控除は受けたい」という人にとってもメリットの大きい制度です。

 

iDeCoは、高齢者は加入できないなどの制約がありますが、上記のように大きなメリットがありますし、最近、加入の手続きが簡素化されたので、利用できる人はぜひ利用を検討しましょう。

NISAとiDeCo、どうやって使い分ければいい?

iDeCoのほうが所得控除のメリットがあるので、所得税や住民税を支払っている人は原則としてiDeCoを優先的に使うとよいでしょう。iDeCoは拠出限度額が小さいので、それ以上に投資をしたい人はNISAも使う、という方針でよいと思います。

 

専業主婦(夫)等で、所得税等を支払っていない人は、多額の金融資産を持っている夫婦でない限り、iDeCoのメリットは大きくありません。配偶者の非課税枠が足りないなら、配偶者から暦年贈与を受けてNISAをすればよいでしょう。後述の「政府の親心」を利用する必要がある場合を除いては…ですが(笑)。

 

気をつけたいのは、iDeCoはNISAと異なり、60歳まで引き出せない、ということです。これは「意思が弱くて簡単に老後資金を取り崩してしまう人でも、老後資金を貯められるように…」という、政府のありがたい親心なのですが、事業の浮き沈みが激しい自営業者にとってはリスクとなりかねません。「iDeCoに投資した資金を回収できれば、倒産を免れたのに…」といった事態に陥るリスクがあるなら、iDeCoよりNISAを選ぶべきでしょう。

初心者向け:「掛け金1万円」でどれだけ税金が減るか計算しよう

所得控除というのは、上記のように「所得がもともと掛け金の分だけ少なかったと考えて所得税等を計算してよい」という制度です。

 

では、掛け金1万円だと税金がどれくらい減るのでしょうか? 給与明細を見て、所得税額を所得額で割ってみましょう。結果が10%だとすると、1,000円だけ税金が減る、と考えるのが普通ですね。でも、違うかもしれません。

 

日本の所得税は累進課税になっています。イメージでいえば、年収が100万円以下なら所得税がゼロ、年収が100万円以上300万円以下の部分については税率が5%、それを超える部分については税率が10%、といった決まりです(実際の数字は異なっていますが)。

 

上記の数値例で計算すると、年収300万円の人は、所得税が10万円ですから、年収の3.3%が所得税です。この人が1万円の掛け金を拠出すると年収299万円として所得税を計算するので、税金が9万9,500円になります。1万円の拠出で税金が500円減ったのですから、5%ですね。

 

年収301万円の人は、税金が10万1,000円ですから、年収の3.3%が所得税です。この人が1万円拠出すると税金が10万円に減ります。なんと、拠出額の10%も税金が減るのです。これに加えて住民税も安くなりますから、節税効果は大きいといえるでしょう。

 

むずかしい言葉でいうと「限界税率が平均税率より高い」から、拠出による節税額は意外と大きい…ということになります。経済学で「限界と平均」という言葉を学んだ人には懐かしいかもしれませんね。

 

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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