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サラリーマンの専業主婦は、年金上「優遇」されている
国民年金は、20歳から60歳までの全員が加入し、保険料の払い漏れがなければ65歳から毎月6万9,000円強の年金(老齢基礎年金と呼ばれます)が受け取れます。
複雑なのは、保険料を払うときに加入者が3つのグループに分けられていることです。サラリーマン(男女を問わず、公務員等を含む。以下同様)は、厚生年金に加入し、厚生年金保険料を支払うことで国民年金保険料を支払ったものとみなされます。
サラリーマンの専業主婦(主夫を含む。以下同様)は、年金保険料を支払わなくても老後は年金(老齢基礎年金と呼ばれます)を受け取ることができます。それ以外の人(自営業者、失業者、学生等々)は、自分で国民年金の保険料を支払う必要があるのです。
独身者や自営業者の専業主婦や失業者や学生などが保険料支払い義務を負っているのと比較して、サラリーマンの専業主婦は優遇されているわけです。筆者はこの優遇を廃止すべきだと考えているのですが、その話は別の機会に譲るとして、本稿では専業主婦の立場から何を考えるべきか、述べていきたいと思います。
「130万円の壁」は専業主婦とみなされるか否かの境界線
サラリーマンの専業主婦とみなされるか否かの判定基準は、「パート等の収入が年間130万円以上か否か」です。そこで、パート等で働く時間を調整して年収が130万円に達しないようにする人が多いわけで、「130万円の壁」と呼ばれているわけです。
たしかに、誰でも年金保険料を支払うのは嫌ですから、働く時間を調整したくなるのはわかりますが、事情が許せば「大いに働いて200万円くらい稼いでしまう」ということも選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。
サラリーマンか否かは「働く時間」等で決まる
サラリーマンか否かを判断する要件は複雑ですが、大雑把にいえば働く時間で判断されます。「大企業で週に20時間以上働くか、中小企業で週に30時間以上働いたらサラリーマンとみなされるので、厚生年金保険料が給料から天引きされる」というわけです。
そうなると、サラリーマンの主婦は、「専業主婦とみなされて何も払わなくてよい場合」「自分がサラリーマンとみなされて厚生年金保険料を給料から天引きされる場合」「サラリーマンの専業主婦とみなされず、サラリーマンともみなされないために、国民年金保険料を支払う必要がある場合」があり得るわけです。
大企業でパートをしている場合、時給1,000円で週に20時間働くと年収は106万円程度ですから、130万円に達しなくても年金保険料の支払い義務が生じるわけです。
したがって、働く時間を20時間以内に抑えよう、という人もいるようです。「106万円の壁」といわれるものです。もっとも、厚生年金保険料を支払っておくと、老後に厚生年金が受け取れるので、老後資金の不安が和らぎますし(長生きに対する保険)、女性の場合には平均寿命が長いので、損得を考えても得になる場合が多いでしょう。短期的には保険料負担がつらいかもしれませんが、長い人生を考えれば厚生年金に加入しておいたほうがよい場合も多いはずです。
ちなみに大企業のパートで長時間働いて年収が130万円以上になっても、国民年金保険料を支払う必要はありません。自分がサラリーマンとして厚生年金保険料を払ったことで、国民年金保険料も払ったことにしてもらえるからです。
専業主婦がいちばんやってはいけない「パートでの働き方」
問題は、中小企業のパートが時給1,000円で週に29時間働くような場合です。サラリーマンとはみなされないので、厚生年金保険料の天引きはありませんが、老後に厚生年金を受け取ることもできません。一方で、年収が130万円以上になるのでサラリーマンの専業主婦とは見なされず、国民年金保険料を支払う義務が生じます。これは避けたい事態です。
そういう人は、以下の3つの選択肢を検討すべきでしょう。第一は、大企業で29時間働いて、厚生年金に加入すること、第二は中小企業で週に30時間働いて厚生年金に加入すること、第三は中小企業で働くパートの時間を調整して年収を130万円未満に抑え、年金保険料の支払い義務を免れること、です。
第三の選択肢は、保険料は免れますが、収入が減ってしまいますし、老後の安心が得られません。それと比べて第一、第二の選択肢では老後の生活の安心が得られることがメリットです。
それに加えて、厚生年金に加入すると国民年金と比べて短期的な負担も減ります。厚生年金保険料は企業と折半なので、年収の9%強で済みますから、時給1,000円で週に30時間程度働く場合には、国民年金保険料(年間約20万円)より厚生年金保険料のほうが安くなるのです。
本稿は以上ですが、意思決定は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
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塚崎 公義
経済評論家
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