(※写真はイメージです/PIXTA)

トランプ大統領就任後の最初の100日間は、市場にとって波乱含みの展開となりました。フランクリン・テンプルトン・インスティテュートのスティーブン・ドーバーが、フランクリン・テンプルトンのシニア投資専門家とともに、関税の影響、米国経済に関する洞察、主要セクターの投資機会、より広範な経済動向について分析します。

※本記事は、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社が2025年5月1日に配信したレポートを転載したものです。

米国地方債市場と地方自治体

米国大統領選挙が近づく中で、地方自治体の税収の伸びには明確な鈍化が見られました。しかし、地方債市場全体としては、コロナ禍後の経済対策やインフレの進行が追い風となり、売上税や所得税の増収というかたちで大きな恩恵を受けてきました。

 

これらの税収は、交通インフラ関連の部局なども含め、州・地方自治体にとって主要な財源であり、地方債の信用力向上に寄与しています。一部のセクターでは苦戦も見られますが、地方債全体の信用力は強固と見られ、2025年度予算で想定されていた控えめな成長予測を上回る状況となっています。

 

こうした財政の安定性は、過去の困難な時期を通じて強化されてきた財政管理と相まって、今後のインフレ再燃や景気後退といった事態にも十分耐え得る備えが整っていることを示唆しています。地方債市場では、発行量の増加やそれに伴う多少の価格変動が見られるものの、多くの発行体が起債を通じて資金調達を行う準備はできています。もっとも、金利がさらに上昇すれば、こうした動きが鈍る可能性はあります。

 

注目すべき分野の一つに教育セクターがあります。高等教育機関は二極化が進んでおり、ハーバード大学やスタンフォード大学のような世界的に有力な大学がある一方で、経営に苦しむ地方の小規模なリベラルアーツ系の大学も存在します。過去2年間で多くの私立大学が閉鎖や統合に追い込まれており、これは過去に例を見ない状況です。

 

トップクラスの研究大学においても、研究助成金の削減に対する懸念はありますが、これらの大学は損失を吸収できるだけの十分な財務基盤を有していると考えられます。

 

地方債の非課税措置が撤廃されるのではないか、という議論も一部で聞かれますが、もし実現すれば、借入コストの上昇などを通じて広範囲に影響が及ぶでしょう。しかし、地方債の非課税措置は、社会基盤(インフラ)整備に必要な資金を低コストで調達する上で不可欠な制度であり、議会内にも維持を支持する声は根強くあります。

 

高等教育機関向け、民間活動債、ヘルスケア関連など、特定の分野が対象となる可能性は否定できませんが、地方債市場全体から非課税という優遇措置が失われる可能性は低いと見ています。

 

以上より、投資戦略としては、金利変動リスクを示すデュレーションは中立に保ちながらも、信用リスクを取ることでリターンを高めるアプローチ(多くの場合、相対的に年限が長く、格付けが低い債券への投資)により価値を見出せると考えています。

 

また、市場が不安定になった際に、個人投資家によるパニック売りような局面を捉える投資機会も存在し、特に、価格が下落した割安な高格付け債を中心に、イールドカーブ(利回り曲線)全体で投資妙味が見出せるでしょう。

 

結論

株式市場、債券市場ともに不確実性と価格変動が続いていますが、現在の環境下には重要な投資機会が存在すると私たちは考えています。特にテクノロジー・セクター、中でもAI関連は引き続き力強い成長分野であり、米国企業が技術革新を牽引しています。このような状況では、個々の企業のファンダメンタルズにしっかりと着目することが極めて重要です。このアプローチこそが、現在の難局を乗り切り、市場におけるミスプライシング(誤った値付け)を捉える上で有効だと考えます。


 

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