本稿の主なポイント
先日、私は当社の経験豊富な投資専門家を招き、パネルディスカッションを主宰しました。そこでは、トランプ大統領就任後100日間の影響、関税問題、それに伴う市場のボラティリティについて議論を交わしました。
パネリストとして、ジェニファー・ジョンストン(フランクリン・テンプルトン債券グループ、地方債リサーチ・ディレクター)、ジェフ・シュルツ(クリアブリッジ・インベストメンツ、経済・市場戦略責任者)、ジョナサン・カーティス(フランクリン株式グループ、最高投資責任者兼ポートフォリオ・マネージャー)が参加しました。
彼らからは、米国経済の底堅さ、テクノロジー・セクターが抱える課題とそこに存在する投資機会、さらには広範な経済・市場のトレンドについての見通しが示されました。本稿では、パネルディスカッションで分析された主要な論点を掘り下げます。
米国経済の底堅さ
パネリストの見解では、米国経済は引き続き底堅さを維持しています。足元でいくつかの課題はあるものの、労働市場は健全です。
2025年4月17日時点の新規失業保険申請件数が21万5,000件に低下したことは、現在の労働力人口を考慮すると歴史的に見ても低い水準です。これは、多くの労働者が雇用を維持しており、消費活動の基盤となる労働所得も依然として力強いことを示唆しています。
また、消費者心理こそ悪化しているものの、実際の個人消費は幅広い分野で堅調さを見せています。こうした状況から、米国の消費者は現在の消費活動を続ける余力があると見ています。
「米国例外主義」に対するリスク
いくつかの要因が重なり、足元では、米国の株価水準、債券金利、そして米ドルが同時に下落する局面がありました。
一部投資家による強制的な売却や、これまで米国資産に流入していた海外資金の巻き戻しが、米国国債と米ドルへの下押し圧力となっています。こうしたリスク回避の動きは、長年にわたって米国資産が積み上がってきた状況が背景にあります。
私たちは、米ドルが過去3~5年間、割高な水準で推移してきたと考えており、いずれ何らかの調整が入ることはかねてより予想していました。加えて、市場ではトランプ大統領が連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長を更迭するのではないかとの観測が広がり、神経質な反応が見られましたが、後に大統領自身がその意図を否定しました。
FRBの独立性は米国の資本市場にとって極めて重要であり、それを脅かすいかなる動きも市場に大きな混乱をもたらしかねません。
もし米国経済がスタグフレーション(景気後退とインフレの併存)に見舞われれば、バリュー株(割安株)の魅力が増すと考えられます。歴史的に見ると、バリュー株は、高インフレ・低成長という環境下で良好なパフォーマンスを示す傾向が確認されています。
過去のスタグフレーション期を振り返っても、エネルギー、素材、ヘルスケアといったセクターは堅調でした。ポートフォリオの分散をさらに進める上では、コモディティ、貴金属(特に金)、そして資源国への投資も有効な選択肢となり得ます。