(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、マネックス証券株式会社が2025年4月24日に公開したレポートを転載したものです。

想定通りに「円安是正」はなくなった

ベッセント米財務長官は23日、一部メディアに対して、関税を巡る日米交渉で「特定の通貨目標を求める考えはない」と語った。円安の是正が焦点になるとの見方が後退し、外国為替市場でドル円相場は円安に振れている。

 

筆者は従前から、このタイミングで米国側から円安是正の要求が出されるとは思わないと述べていた。財務相会談が無難に通過となれば、ドルが買い戻されるだろう。したがって円高が悪材料となって株価が下げるなら、そこは買い場であると語っている。すべて想定どおりである。

 

今週月曜日(2025年4月21日)のマンデーナイトライブで僕が語ったことを、本記事で再録しておこう。

 

MCの佐々木さん:今日は円相場がおよそ7ヵ月ぶりに一時1ドル140円台まで進んだということで、為替の質問がたくさん来ています。今日また一段と円高が進んだ背景についてまずお伺いできますか?

 

広木:ドル円が140円台に突っ込んだ理由は2つ。1つは円安の是正を求められるのではないかという懸念です。24日で調整している日米の財務相会談があります。加藤財務大臣がG20で訪米しているので、そこでベッセント財務長官と会って話をします。

 

前回赤沢さん(現経済再生相)が行ったときにね、為替の話は出ませんでした、と赤沢さんはいったんだけども、事情通にいわせると「そのときは出ませんでした」っていうより、ちょっとそらしたらしい。出さないでくれといったらしいです。出さないでくれというより、為替マターは財務大臣とやってくれって。

 

だから今度加藤さんが行くので、そこでは為替の話は出るんでしょうね。だけど結論からいっちゃうと僕は円安是正をアメリカが突き付けてくるっていうのはないと思う。このタイミングで。

 

なぜかというと今日、円高が進んだ2つ目の理由、つまりFRBのパウエル議長の更迭をトランプ政権が画策しているという話。パウエル議長解任となれば金融市場が混乱し、ドル不信でなおさら売られるという連想からドル安円高に進んだというのが2つ目の理由です。

 

トランプが利下げしろ、利下げしろといってるのに、パウエルが結構頑なに「インフレ懸念もあるから」といった理由ですごく慎重なスタンスを取っていることに不満をぶつけているわけで、これでもし万が一解任されたとして、次に誰がFRB議長をやろうが、当然それは利下げバイアスが強くなる。

 

こんな状況で、仮にアメリカ政府がドル安誘導ってことになってしまうと、ただでさえFRBへの政府介入で金融市場が混乱してドル不信でドルが売られるみたいな状況下でそういうこと(政府間での為替誘導)をやれるのか? いやできないだろうというのが、ひとつの理由です。悪いドル安みたいな形になってしまうじゃないですか。

 

そもそも皆しょっちゅう「為替操作はいかん」みたいなことをいいますよね。マーケット関係者、特に為替の人とか。アメリカの為替報告書というのがあるじゃないですか。これによっていつも日本が為替操作国に認定されるかと戦々恐々しているのだけれど、そんなこと逆にアメリカがいえる立場なのかと。

 

プラザ合意のときから、思いっきり政府が加入してコントロールしてきているわけで、為替操作というより、もうむちゃくちゃやってきているのはアメリカ自身じゃないかという話なのですが……。そのようななかこのタイミングでドル安誘導なんかに持っていったら止まらなくなりますから。いわゆる悪いドル安ですから。

 

ついこのあいだも、相互関税発動の日。日本時間の4月9日ですが、トリプル安になって、そのときに慌てて米国債が売られて金利が急騰したというのがあり、そこでさらに慌てて90日間の猶予というのを打ち出したわけですね。米国債売りのドル急落ですから。もうアメリカ全部売り、「アメリカ不信=トリプル安」にすぐなってしまう状況下で、ドル安誘導なんてすると、もう止まらなくなりますから。

 

でも、そもそもトランプ政権の政策というのは経済合理性から矛盾したことばかりやっていますが、それはしょうがないと、僕はずっといってて。別に経済合理性で動いてないから。政治的な信条とイデオロギーと自分の政権支持者への公約っていう政治マターでやっている政策なのでね、経済合理性無視なんですよ。

 

経済合理性からいったらこんなところでそのドル安誘導なんかやったら大変なことになるわけですが。ただ、いくら経済合理性無視とはいえベッセントがいる以上は、やっぱりそんな危ないことはやらないと思いますよ。

 

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