突っ込んだ“円高”、買うなら短期目線で
広木:今回の関税政策の一応理論的な支柱とされてるのは3月に大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長に就任したスティーブン・ミラーという人がいるのですが、いったいどこの何者かもまったくわかんないポッと出です。一応理論とか筋書きとかを担うトランプの経済ブレインとされてますけど、いや、まったくもう真っ当な経済学者ではないです。
まったく傍流な人で、発言は無茶苦茶ですから。トランプ政権というのは経済理論に則っていないので、それはしょうがないで置いておくとして、でも無茶苦茶なことをいってるわけです。それで、そのスティーブン・ミラーは「関税かけてドル安誘導」ということをいっていたのだけれど、それはもう成り立たないですからね。どう考えても。
このMonday Night Liveでも何回もいってると思いますけど、シンプルな話困るのはアメリカの国民ですから。関税かけるってことはそのかかった関税は全部アメリカ政府に入るわけで、国民は逆にその関税に上乗せされて高いものを買わされるわけですよ。高いもの買わされて通貨のドルがさらに安くなったらより高く買わされちゃう。こんなひどい話はないので、そこでもうドルが急落して止まらなくなったらそれはもう話にならないですよね。
日本のことを見てくださいっていってるんです。日本は全部エネルギーにしろ食料にしろ海外の依存度が高いので、海外のインフレが日本に波及して日本もようやくインフレになってきたという話なのだけれど、そこで為替が円安になったらやっぱりそのダブルの効果で輸入物価が高くなる。
同じことですが、購買力が落ちていると、国民の不安が表面化して「日銀、なんとかしろ」という話になっているわけじゃないですか。それと同じことがアメリカでも起きるわけですよね。ここから。
関税でインフレって、関税で自動的に物価が高くなるわけで、それで諸々の要因でさらにインフレがもう1回加速していき、それで通貨安までになったら国民の不満がものすごい爆発します。そしてアメリカの経済がガタガタになると思うんですよ。ドルの信認が落ちるということ。
だから昔ルービンがいった「強いドル」はアメリカの国益にかなうとベッセントもいいたいのではないかと推察するのだが。気兼ねがあっていえないでしょうけれど、こういった段階でドル安誘導なんてないと思います。ベッセント・加藤会談ではね。
だからいまの円高で日本株が売られる局面は短期的な買い場だと思うんですよ。財務省会談でその話が出ませんでした、みたいなことになると、戻す可能性があるので、すごい短期目線でいけば円高で突っ込んだところは買いと思います。
(以上4月21日付Monday Night Liveより抜粋)
トランプ政権は軌道修正されるのか?
結果からいえば、押し目はなかったので買えなかっただろう。日経平均は3万5,000円台を回復した。トランプ政策の矛盾が早くも軌道修正を迫られていることが背景だ。それを促しているのは市場の力である。
ここまでの流れを見る限り、米国債売りにつながるドル安政策というのはないと考えていいだろう。マールアラーゴ合意などという「トンデモ」話に振り回されないことが賢明である。
2025年4月21日(月)配信分のオンデマンド動画はマネクリからご覧になれます。
https://media.monex.co.jp/articles/-/26881
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員
※本記事はマネックス証券 チーフ・ストラテジスト広木隆氏のストラテジーレポート『想定通りに「円安是正」はなくなった』を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。また、投資による結果に編集部は一切責任を負いません。投資に関する決定は、自らの判断と責任により行っていただきますようお願いいたします。
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