バブル経済崩壊直後の自宅土地価格3,000万円が6,000万円に…90代母親の遺産を相続することになった〈55歳男性〉が喜んでもいられないワケ【相続の専門家が解説】

バブル経済崩壊直後の自宅土地価格3,000万円が6,000万円に…90代母親の遺産を相続することになった〈55歳男性〉が喜んでもいられないワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

母親と同居していた圭さん(55歳)は、母の死後、実家の相続で思わぬ壁にぶつかりました。自宅が「共有名義」だったことで、手続きが複雑になり、贈与税の問題まで発生したのです。最近は、かつて相続税と無縁だった家庭でも、制度改正や不動産評価額の上昇で申告が必要になることがあります。こうした事態をどう乗り越えるべきか? 相続実務士の曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。

名義を変える方法は2つ 売買か、贈与

1.圭さんが土地代金を払い、買い取る

圭さんが姉の持ち分4分の1を、相続評価1,500万円で買い取る方法があります。

 

圭さんは自己資金で姉に1,500万円払います。姉は土地を売却したことで、翌年、申告をして、譲渡税を払います。

 

譲渡税の計算は下記のとおりです。

 

1,500万円-原価【5%】75万円=1,140万円×20.315%(国税・住民税)=289万円 納税後の手取り額1,210万円

 

共有者の持ち分を買い取るときの価格は、路線価を基準にすることが基本になりますが、姉が流通している時価による価格を希望する場合は、時価を選択する必要も出てくるかもしれません。両者で話し合い、決めることになりますが、相続評価は時価の8割程度とされており、その価格では不満となれば、周辺の取引事例を参考にして、価格を決めることになります。

 

2.姉が自分の持ち分を弟に贈与する

贈与は、姉が4分の1を圭さんに無償で渡すことです。姉の所有する土地の評価は1,500万円ですので、姉から圭さんに贈与をしてもらうようにすれば、名義は圭さんひとりになります。贈与を受けた場合は、もらった圭さんが翌年、贈与税を支払うことになり、1,500万円の贈与税は非課税110万円を引いた1,090万円に課税されます。

 

贈与税の計算は下記の通り

 

1,090万円×45%-175万円=450.5万円 

 

姉は、そもそも父親から相続したもので自分のお金を払ったわけではないので、贈与するということで話がまとまりました。


贈与の手続きに必要な書類と流れ

姉が圭さんに贈与するという方針が決まりましたので、贈与手続きに必要な書類や流れを圭さんと姉に説明し、準備をしてもらうようにしました。
 

【不動産の贈与手続きの流れ】

1.贈与契約の締結

贈与者(あげる人・姉)と受贈者(もらう人・圭さん)との間で、贈与契約をします。書面にしないと「不動産の登記」ができないため、必ず契約書(実印押印)を作成します。

 

2.登記の準備(名義変更)

贈与によって所有者が変わるので、不動産の所有権移転登記を行います。

 

3.登記申請(法務局)

・書類をそろえて、管轄の法務局で所有権移転登記を申請。

・このとき、登録免許税の支払いが必要(贈与の場合は固定資産評価額の2%)

 

4.贈与税の申告(必要な場合)

・贈与を受けた人は、贈与税の申告が必要になる可能性があります(翌年の2月1日〜3月15日)。

・基礎控除110万円を超える部分について課税対象になります。

 

【不動産贈与に必要な書類】

▼共通で必要な書類

書類名

説明

贈与契約書

贈与の意思を明記した正式な書面

登記申請書

所有権移転のため法務局に提出

登記原因証明情報

贈与の理由を記載(契約書を兼ねることもあり)

固定資産評価証明書

登録免許税の算出に必要。市区町村役場で取得

贈与者・受贈者の印鑑証明書

3ヶ月以内のもの。特に贈与者の実印が重要

住民票(受贈者)

登記上の住所として必要

登記識別情報(または権利証)

贈与者が所有権者である証明書

委任状(代理人が行う場合)

本人以外が手続きする際に必要

 

権利証がない!

圭さんが書類を準備する間に、父親が亡くなったときに相続登記をした権利証が見当たらないということが発覚しました。父親の相続手続きは母親が行っていましたので、知り合いの司法書士に依頼したということは聞いていましたが、権利証がどこにあるかは母親が亡くなるまでは気にしていなかったと言います。あらためて探してもらいましたが、母親が保管していた書類の中には見つからず。もう探しようがないといいます。

 

そうした場合には、法務局で保証書を作成することで、登記をすることができます。司法書士に事情を説明し、権利証ではなく、保証書を作成する方法に切り替えて手続きを進めることにしました。

 

この方法により姉から圭さんに名義替えができますので、自宅は圭さん1人の所有となり、課題が解決します。あとは贈与税の申告をすることで完了します。

 

保証書(本人確認情報)によって移転登記をする方法とは?

保証書を作成して登記をする方法は下記のようになります。

 

1】保証書での登記とは?(本人確認情報制度)

不動産の名義を変える(移転登記)際に、登記名義人(売主など)の本人確認情報を公的に証明する書類(保証書)を作成して、登記申請時に法務局へ提出する制度です。

 

2】この方法を使うケース

権利証(登記済証)や登記識別情報を紛失した場合

相続や贈与などで移転登記をするが、権利証が見当たらない場合

抵当権の抹消登記の際にも使えることがあります

 

3】手続きの流れ

 1.司法書士に依頼

本人確認情報(保証書)の作成は、司法書士などの資格者代理人のみが行えます。まずは司法書士に事情を説明し、依頼します。

 

2. 面談による本人確認

司法書士が、依頼者(登記名義人)と面談して、本人確認を実施します。下記のような公的書類を使用します。

 

運転免許証・マイナンバーカード・パスポート など

印鑑証明書

住民票

その他必要に応じて戸籍など

 

3. 本人確認情報(保証書)の作成

司法書士が、面談結果と提出書類に基づいて「本人確認情報(保証書)」を作成します。

 

4. 移転登記の申請

司法書士が移転登記申請書とともに、本人確認情報(保証書)を法務局に提出します。

 

4】費用の目安

通常の登記費用に加えて、本人確認情報作成費用として2〜5万円程度が司法書士に支払われます(事務所により異なります)。

 

5】注意点

偽造や不正登記を防ぐため、法務局が本人確認情報に対して内容精査を行うため、通常よりも登記完了まで日数がかかることがあります(1〜2週間程度)。

 

司法書士によっては、過去の登記情報や関係書類を求められることもあります。

 

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

注目のセミナー情報

【海外不動産】12月18日(木)開催
【モンゴル不動産セミナー】
坪単価70万円は東南アジアの半額!!
世界屈指レアアース産出国の都心で600万円台から購入可能な新築マンション

 

【事業投資】12月20日(土)開催
東京・門前仲町、誰もが知る「超大手ホテルグループ」1階に出店!
飲食店の「プチオーナー」になる…初心者も参加可能な、飲食店経営ビジネスの新しいカタチとは?

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
川柳コンテストの詳細はコチラです アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです 不動産小口化商品の情報サイト「不動産小口化商品ナビ」はこちらです 特設サイト「社長・院長のためのDXナビ」はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録