わかりやすさが人材不足を解消
著書では耐久性調査のことをできるだけ分かりやすくお伝えしたつもりですが、それでもやや難しいところは残らざるを得ないと思っています。
そんななかで私たちの調査結果を、知識のバックボーンのない人にも分かりやすく伝える努力と研鑽が必要だと考えています。
一方、プレゼンテーションにおける技術革新も進んでおり、さまざまな場面で変化が起きています。
例えばVR(バーチャルリアリティ)およびAR(拡張現実)の技術です。
VRを利用すると、設計者やクライアントがまだ建設されていない空間を仮想的に探検することができます。そのため、将来の変化を直接的に見たり、感じたりしてもらうことが可能となります。
ARに関しても材料の種類や強度を示すなど、クライアントに調査の結果を理解してもらうことに役立つものだと考えています。
また3Dモデリング技術もこれにあたります。この技術はインパクトが大きく、3Dの分かりやすさは、伝えることに対して大きな力となってくれるのです。
また少し広い概念でBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)という技術もあります。これは建築物の設計、施工、運用を効率化するために、デジタル技術を通じて一元管理するもので、理解しやすいインターフェイスが特徴となっています。効率的という観点だけでなく、伝えるという観点でもBIMを扱えるかどうかが、調査会社としての競争力のうえでも重要になる時代が来ると考えています。
フェーズドアレイ超音波探傷技術は、従来の超音波探傷試験よりも直感的に結果が理解しやすいです。ただ実際には私たちはこの装置を持っていても、現場では装置の軽さや取り回しの簡単さから、従来の超音波探傷器を使うことがほとんどです。
しかし、従来の装構置は結果の解釈が難しいため、一般の人が表示されていることの意味を理解するのは困難です。ここで、結果を2Dの画像で伝えられるフェーズドアレイ超音波探傷技術は大きな利点となります。
現代においては分かりやすさも価値となっています。クライアントに説明する場合はもちろんですが、これは私たちの仲間の育成にも関わってきます。今までは、難しい装置だったので、1人前になるまで長い年月が必要でした。理解しやすい装置であれば、育成期間を大幅に短縮できるかもしれません。
専門技術者の不足という問題を解決することにつながるのです。
角田賢明
株式会社ジャスト
代表取締役社長
