不正認可がもたらした法改正~2007年の建築基準法改定~
この事件は、建築物の安全保証のシステムの不備を明らかにしたことで、社会に大きな不安を与え、2007年の建築基準法改定の契機となりました。
改定により、建築士の定期講習が義務化され、一定規模以上の建物は通常の確認申請だけではなく第三者による構造上の適合性判定(構造適判)を受けることが必要となり、新たに国家資格として構造設計一級建築士が生まれたのです。
改正基準法が施行された直後は、構造適判により確認審査期間が大幅に延長されることによって、建築業界は大きな混乱に巻き込まれました。しかしながら、その後も業界における類似の事件はあとを絶ちません。
このような不正は、一時的には利益につながったとしても、一度明るみに出れば、積み上げてきた信頼が吹き飛び、高い代償を払うことになるのです。そうならないために企業が取り得る手段はいくつかあります。
まずは内部監査を確実に行うことです。定期的な内部監査は、組織の意識を高め、不正が起こらないための業務の透明性と整合性を保つために不可欠です。また、内部監査を行っている記録が、しっかりとした内部統制を外部に示す証拠にもなります。
また、従業員に対してしっかりと教育を行うことも重要です。従業員のスキルが高いと問題を防ぎやすくなりますし、倫理的なトレーニングを定期的に行うことで、従業員の意識を高く保てます。
このような対策のなかでも、特に私たちが重視しているのが第三者性です。例えば、ある建物の検査を、その建物を施工した会社が行っていたら、やはり疑いの目で見られてしまいます。たとえ厳正なものであったとしても、この検査結果に対する信用は極めて低くなってしまいます。
こうした立場自体がデータの信頼性を落としてしまうことがないように、私たちは検査や調査を本業とするうえで、特定の顧客と親密になりすぎることには特に気をつけています。また、私たちは検査や調査だけで、施工の仕事をすることはありません。施工の仕事により検査や調査の第三者性が失われてしまいます。
また、施工の仕事を受注すれば、受注のために検査結果に手心を加えたと邪推されることもあるからです。
角田賢明
株式会社ジャスト
代表取締役社長
