自分たちで考え、改善する姿勢を育てることが大切
現在の看護部長は前職で看護師教育の専任担当を務めるほど、人材教育にたけていて、私の病院の人事考課制度を運用するうえでも力を発揮してくれています。
だからというわけではないのですが、看護職には業務改善に関心の高い人が多いように思います。新人看護師の教育を目的として看護部長が中心になって立ち上げた「看護部教育委員会」は現在、病院全体の教育委員会として機能しています。新卒者の受け入れは看護部だけの問題ではないので、全病院的に取り組むほうが得策であるという判断によるものです。
考えてみれば、労務の話や挨拶、身だしなみといった基本的な事柄は看護部特有の話ではなく、他部署でも共有できる課題ですから、統合しても差し支えないということです。部署間の垣根が低いという私たちの病院の職場風土も影響しているのかもしれません。
看護部だけの教育や業務改善にとどめるのではなく、病院全体のこととして取り組むことにしたのは決して私の理事長権限によるものではなく、前の看護部教育委員会側からの提案を承認したものです。トップダウンで動くのではなく、自分たちで考え改善することを実践しています。
そういった姿勢を育てていくことは私たち経営陣の責務であると考えています。自らが主体的に考え、実践していく風土になじみやすい人材がたくさん集まっているからこそ、さまざまな改善がなされていくのです。
まだ私が事務長だったころ、「事務長が教える仕事術」という院内勉強会を開いていました。記念すべき第1回のテーマは「問題改善力について」でした。問題改善の考え方から始まり、実際に進めていくときの手順や注意事項などの講義とそれを踏まえたグループワークの2本立てで、それぞれに1時間ずつくらい充てました。
そういう勉強会を12回続けました。いまの若い職員にとっては伝説のイベントですが、当時受講した職員を中心に寄せられた声に応じて1度復活したこともあります。
自分たちで考え、改善する姿勢を育むために行った仕掛けの1つに課長クラスが否応なく話をしなければならない会を意図的に設けたことがあります。そうしたことができる背景にはやはり部署間の垣根の低さがあると考えています。
部署間にまたがる問題を協議するためには各部署の主任や課長が集まって情報共有したり、問題解決の道筋をつけたりしなければなりません。そうなると、必然的に自分の考えをまとめたり、発言したりする必要に迫られます。大きくとらえると、これも人材教育の一環になっているのです。
私自身、自分の病院にだけとどまっていると、なかなか外の動きはわからないので、意識的にほかの病院の幹部と話す場面を設けるのですが、ある病院の看護部長から、私(当時は事務長)と看護部長が親しく話す様子が珍しいといわれたことがあります。
私の病院では極めて日常的な光景ですから、どこが珍しいのかと問うと、その病院では事務長と看護部長は一切、口をきかないというのです。驚いたことに、そういう病院は意外と多くあります。決して当人同士、仲が悪いわけではなさそうなのに、交流がないのは珍しくありません。
改めて私の病院のことを考えてみると、看護部長に限らず、各部長と目指すべき方向が同じであることが病院全体としての一体感やまとまりをつくっていると思います。そういう素地があるため、管理職もなにかにつけて集まり、会議を開くことが私の病院では日常になっているのです。
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