人事は長期的な視点で取り組む
私の病院は人事考課制度を導入するまで、本格的な教育制度や評価制度はまったくありませんでした。私自身も事務方として入職した当初は積極的に取り組む気持ちが薄かったのが正直なところです。当時、周辺の病院もほとんど同じような状況だったと思います。
その後、人事考課制度が病院機能評価の要件の1つだとわかり、看護部長の提案で少しずつ準備を進めました。当時は前例がなかったため、各部門で勉強しながら、まずは試行的に取り組んでみることにしたと記憶しています。
いまの私は病院経営者と医業経営コンサルタントという2つの顔を持っています。コンサルタントの資格を取る前は事務長として専門家の指導を受ける立場でしたが、いまではコンサルタントの視点から自らの経営を見ています。
コンサルタントにはそれぞれ得意分野があります。たとえば、労務管理に強い人や給与体の構築に詳しい人など、分野によって専門性が異なります。
そのため病院は自分たちのニーズに合ったコンサルタントを選びますが、契約期間は1〜3年もしくはプロジェクトごとと比較的短期間が多いです。なんらかのシステムを導入しても、それを使いこなすのは病院側に委ねられることが多いのが実情です。
しかし、私たち病院側としては「導入して終わり」ではなく、システムを継続的に改善しながら運用していきたいと考えています。そのため、コンサルタントには短期的な視点だけでなく、中長期的な視点でともに歩んでほしいと思っています。私が病院経営者としてコンサルタントの視点を持つことの最大の利点は、長期的な視点で物事を考えられる点です。
振り返ると、人事考課制度をしっかりと続けてきたことが、経営の質向上につながったことは確かです。また、職員に目標を持たせ、働きやすい環境と成果に応じた処遇を提供することで結果としてスタッフの質やモチベーションが上がり、これが経営がうまくいくための大きな要素であることを深く考えさせられました。
医療現場は労働集約型の産業であり、医療機器の高度化よりも人材の質が大きく影響すると個人的には考えています。看護師にも力量の差があり、優れた看護師が多いほうが患者にとっても医師にとってもよい結果をもたらします。下級者を中級者に、そして上級者に育てるためには、教育と適切な評価が欠かせません。それが、私の病院が目指す人事考課の根本です。
常に心がけているのは、職員が納得できる公正で明確な制度を構築することです。経営者だけの満足では意味がありません。人事考課を導入したから経営がよくなるのではなく、職員が納得できる制度を取り入れたからこそ、経営がよくなるのです。
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