(※写真はイメージです/PIXTA)

父の相続は遺言書によりスムーズに進んだものの、母の相続では、土地や株式など約2億7,000万円にのぼる財産を4人きょうだいでどのように分けるかが課題となりました。「できるだけ公平に分けたい」という思いのもと話し合いを進める中で浮上したのが、相続税を軽減できる「家なき子特例」の活用です。今回は、自宅の名義を長男が単独で相続し、代償金を支払うことで、きょうだい全員が納得する分割と、1,300万円を超える節税を実現しました。相続実務士の曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。

補足 小規模宅地等の特例とは?

小規模宅地等の特例」は、被相続人(亡くなった人)が住んでいた自宅の土地事業用の土地について、一定の要件を満たせば相続税の課税評価額を大幅に減額できる制度です。

  • 自宅の土地 → 最大 80% 減額

  • 事業用の土地 → 最大 50% 減額

 

この特例の適用により、相続税負担を大きく軽減できます。

 

「家なき子」の要件とは?

「家なき子」とは、被相続人の親族で、相続開始前の一定期間、自分や配偶者の所有する家に住んでいなかった人 のことを指します。

要件(令和4年度税制改正後)

「家なき子」として 小規模宅地等の特例を適用できる人 は、以下の要件をすべて満たす必要があります。

・被相続人の親族であること(主に子・孫・兄弟姉妹など)
・相続開始前3年以上、自分や配偶者が所有する家に住んでいないこと
・相続税の申告期限まで引き続きその家に住み続けること
・被相続人に配偶者や同居していた相続人(親族)がいないこと
・過去に「家なき子」制度を利用して相続税の軽減を受けたことがないこと

 

「家なき子」の適用例

適用されるケース

  1. 親元を離れて賃貸住宅で生活
    ・亡くなった親が住んでいた自宅(持ち家)がある
    ・子は賃貸マンションに住んでいた(3年以上)
    ・その家を相続して、相続税の申告期限まで住み続ける

→ 80%評価減が適用可能!

 

 適用されないケース

  1. 自分または配偶者が家を持っている
    ・たとえ賃貸に住んでいても、自分や配偶者が持ち家を所有している場合はNG
     
  2. 亡くなった親の家に同居していた相続人がいる
    ・例えば、兄が親と同居していた場合、家なき子の特例は使えない
     
  3. 相続税の申告期限までに売却・転居した
    ・申告期限(相続開始から10ヶ月)までに住んでいないと適用不可

 

「家なき子」の特例が厳しくなった背景

以前は「相続税対策のために家をあえて持たず、親の自宅を相続する」ことで税負担を軽くする人が増えました。そのため、2018年(平成30年)と2022年(令和4年)の税制改正で条件が厳しくなりました。

 

まとめ

「家なき子」の特例は、持ち家を持たずに賃貸などで暮らしていた相続人が、亡くなった親の自宅を相続する場合に適用される減税措置です。


        

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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