親父、ありがとう!95歳の父の遺産は2億円超。母はすでに鬼籍で「配偶者の特例が使えなかった!」と焦ったものの〈65歳長男〉が感謝した父の生前の行い【相続の専門家が解説】

親父、ありがとう!95歳の父の遺産は2億円超。母はすでに鬼籍で「配偶者の特例が使えなかった!」と焦ったものの〈65歳長男〉が感謝した父の生前の行い【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「父が亡くなりました。生前に相談していたので連絡しました」と相続実務士の曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)の元に連絡してきた65歳の雅史さん。95歳で亡くなった父親は、多くの不動産を所有し、相続税の課題を抱えていましたが、生前に相続プランを立て、遺言や手引書も用意していました。準備があったことで、残された家族は慌てず手続きを進められたといいます。この実例をもとに、曽根氏が解説します。


生前の対策と分割案の提案

相続プランでは分割案も検証して提案しています。4人の子どものうち、地元に住んでいるのは長女と次男です。雅史さんと次女は地元を離れています。

 

そうした現状もあり、父親も4人の子どもにどのように相続されるのがいいか、決めきれないということで、4つのパターンを想定して、分割案の提案をしました。

 

分割案検証に当たっての前提条件

1、自宅は長女が相続 理由:次男様に相続させるには広大=維持できない可能性。長男は別宅を構えており、戻らないと推測。次女は嫁いでおり、実家から離れている ⇒長女が事業継承して現地を活用しているため相続人に最適と判断

 

2、次女は不動産を相続しない 理由:実家から離れており、実質的に管理が困難になる可能性が高い

 

3、次男は安定的な不動産収入があるものを相続 理由:生活資金を確保するため

 

4、不動産売却する場合はいくつかまとめて 理由:再建築不可やマイナス収支、調整区域の不動産だけの売却は困難 →活用できる不動産も一部含めて売却することで整理可能に

 

5、評価額と実勢(売却)価格は違う 理由:都心は 評価額<実勢価格、 地方は 評価額>実勢価格 ⇒売却すると財産が縮小する。


総論

1、権利関係が不明瞭な不動産 ⇒権利関係の明確化or 売却
2、マイナス収支の不動産 ⇒活用してプラス収支に変えるor 売却
3、ご自宅(及び店舗)の継承先 ⇒ご長女様に引き継がれるのが最良 ※店舗はご長女様が使われるので、 権利関係の複雑化を避けるため

 

相続後にすることの手引書も作成 用意した価値

父親には分割案を決めて、遺言書を作成することを提案していました。また、相続後に子どもたちが右往左往しないように、手続きの順や、用意する書類などをあげて手引書となる書類も筆者が作成して、お渡ししていました。

 

父親は母親が亡くなったあとは一人暮らしとなり、その後は高齢者住宅に住み替えました。おりしもコロナの時期となり、その後の対策や遺言書の作成はできずに亡くなりました。

 

けれども、当時、作成して相続プランや相続の手引書があり、今回、あらためて雅史さんやごきょうだいに渡すことができましたので、揉めたり慌てることなく、財産の全体像も確認でき、相続手続きのイメージも作れたと雅史さんは話されていました。

 

父親の財産は8年前とはそれほど変わっておらず、課題があった不動産のいくつかの処分ができていて、現金が増え、それでもほとんど同程度の財産です。相続税は2,300万円ほどと予測されますが、預金で払える見込みです。

 

残る課題は分割方法と不動産の維持の仕方です。これからいくつかのパターンを作り、提案して決めていただくようになります。

 

父親は亡くなったのですが、8年前の資料や父親の思いが残されており、それをベースとして相続人の子どもたちと共有することができています。

 

そして、父親が「自分が亡くなったら(筆者に)連絡するように」と伝えていただいていたことで、父親の思いやいままで準備した資料を生かすことができました。

 

 


        

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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