ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中!
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【基本編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!
心の逃げ場を求めて支出増
「実家の母に会いに、月1回は新幹線で帰ることにしたの」
「気分転換に、外での食事や旅行を増やしたい」
「家のなかでも気が晴れないから、リフォームして気分を変えたい」
これらは、彼女なりの“心の逃げ場”を求める行動でした。しかし、回数を重ねるにつれて、その支出は家計をじわじわと圧迫していきます。坂井さん夫婦の年金額は288万円。年金暮らしで収入が十分でないことから、夫の誠さんは増え続ける出費を心配し、智子さんに苛立ちながら注意するようになりました。
「そんなに頻繁に実家に帰らなくても……」
「ご近所づきあいも無理せず断ればいいじゃないか。食費もばかにならないし」
「外食も旅行も、少し控えられないかな?」
「リフォームなんて、いますぐ必要ないだろう」
誠さんの言葉はもっともでしたが、精神的に追い詰められている智子さんには、責められているように感じられました。「私の気持ちも知らないで! こんな家に閉じこもっていたら、おかしくなっちゃう!」と訴えます。2人のあいだには、これまでにはなかった険悪な空気が漂うように。些細なことから激しい口論に発展することも増えていきました。
ある日、例によって支出のことで言い争いになった際、智子さんは堰を切ったように叫びました。「もう嫌だ! こんな生活! こんなことになるなら、家なんて買わなければよかったのよ!」と。その言葉は、新居での幸せな生活を夢見ていた誠さんの胸に深く突き刺さりました。引っ越しから1年、理想のマイホームには重苦しい空気が漂っています。
退職後の住宅購入で見落としがちな「3つの視点」
住宅購入自体は家計上、悪手とは限りません。しかしFPとしてお伝えしたいのは、「住宅そのもの」ではなく、「住宅を中心とした暮らしの構造」に目を向けるべきということです。
1. 心理的ストレスは支出に直結する
住環境における人間関係のストレスは、健康悪化・交際費増加・娯楽消費の増加を招きます。「ご近所トラブル」は家計上の“ストレスコスト”として顕在化しやすい点に注意が必要です。
2. 不動産は“静的資産”…自由に動けるお金が減ると、柔軟性が失われる
2,400万円の現金一括購入は、堅実な選択に見えますが、実際には可動資産の大幅減少を意味します。医療・介護などの突発的支出に対応できる資金の余白を奪うことにもつながります。
3. 住宅購入は出口戦略まで考えて判断する
たとえば「10年後にどちらかが介護状態になったとき、この住宅は売却可能か?」「夫婦どちらかが先に亡くなった場合、この家で一人暮らしが現実的か?」といった未来の生活動線まで視野に入れた判断が求められます。
