旧来の「ものづくり信仰」が仇に?…機能や品質は世界トップクラスの日本企業が、Appleのような「熱狂的ファン」を生めないワケ

旧来の「ものづくり信仰」が仇に?…機能や品質は世界トップクラスの日本企業が、Appleのような「熱狂的ファン」を生めないワケ
(※画像はイメージです/PIXTA)

「なぜ日本からGAFAMのような企業が生まれないのか?」この問いはしばしば議論されますが、その答えは技術力や人材水準の違いだけにあるわけではありません。実業家であり経営コンサルタントの勝木健太氏は、「所有することによって特別感を得られる体験」を提供できていないことが、主な理由であると語っています。本記事では、勝木氏の著書『「マウント消費」の経済学』(小学館)から一部を抜粋・再編集し、その見解を詳しく解説します。

「特別感を提供する」という視点の欠落

では、なぜ日本企業にとって「マウント体験」の提供が難しいのか。その理由の一つは、「良い製品をつくれば売れる」という旧来の価値観が根強く残っているからだろう。

 

品質や技術力に過度に注力するあまり、消費者がその製品を通じて「どう見られたいか」「どのように感じたいか」といった心理的側面への配慮が十分に行き届いていないことがブランドロイヤリティの形成を阻む要因となっている可能性がある。

 

このような「ものづくり信仰」が、消費者体験を柔軟かつ革新的に設計する発想を制限し、結果、「特別感を提供する」という視点が欠落してしまっているのではないか。

 

日本企業が真にグローバルな競争力を手にするためには、MXの創出が必要不可欠である。製品の性能や品質を追求するだけではなく、それを通じて消費者が「自分は特別な存在だ」と深く実感できる体験を提供することが次世代の成長戦略の核心となる。

 

具体的には、顧客が製品を所有することで得られる満足感や他者との差異を誇示できる仕組みを巧みにデザインし、消費者心理に寄り添った価値を与えることが重要となる。こうした戦略的な仕掛けを積極的に取り入れることで、日本企業は競争のフィールドを広げ、次なる成長のステージへと果敢に踏み出すことができるようになるだろう。 

 

日本が進むべき方向性は明確だ。それは、「世界最高の製品をつくること」から「世界最高のマウント体験を提供すること」へと価値観をシフトし、消費者の心を深く捉える新たなモデルを構築することだ。

 

この転換を実現するための鍵となるのがMXの視点であり、この視点をいかにしてビジネスの中心に据え、顧客体験を戦略の基盤として位置づけられるかが、今後の日本企業の競争力を決定づける重要な要素となるのである。

 

 

勝木健太
文筆家、実業家、経営コンサルタント

 

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※本連載は勝木健太氏の著書『「マウント消費」の経済学』(小学館)より一部を抜粋・再編集したものです。

「マウント消費」の経済学

「マウント消費」の経済学

勝木 健太

小学館

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