モノ、コトの時代から「マウント消費」の時代へ
経済成長の観点から見れば、モノやコトの需要が飽和しつつある我が国の経済において「マウント需要」が増加していることは、ある種の「皮肉な福音」とも言えるのかもしれない。
かつて、物質的な豊かさを追い求める「モノ消費」が経済を支えていた時代において、人々は新しい家電や車を購入し、より広い家を手に入れることを目指して消費を繰り返していた。しかし、その需要はすでに満たされ、完全に行き渡ってしまった。
冷蔵庫やテレビ、クローゼットいっぱいの洋服──それらをこれ以上増やしたところで、大きな生活の変化を感じる人はほとんどいないだろう。このように、生活に必要なモノが行き渡った先進国の消費者にとって「さらに買い足すこと」はもはや満足感をもたらす行為ではなくなりつつある。
そこで登場したのが「コト消費」である。モノではなく、体験そのものを求める消費行動──高級ホテルでの滞在や特別な料理を堪能するディナー、ラグジュアリーな旅行プラン──こうした〝コト〞を消費することで、物質的な所有ではなく、人生の豊かさや充実感を追求する動きが加速した。
この流れは、モノの所有の先を行った「体験の時代」を象徴するものであり、従来の消費概念を大きく転換させるものであった。
だが、SNSが普及したことによって、この「コト消費」ですらも他者に見せつけることで自分を際立たせるための「マウント消費」へと変貌を遂げつつある。
つまり、消費の価値が「モノ→コト→マウント」へと移り変わってきているのである。単に高級レストランでディナーを楽しむだけでなく、その体験をSNSでシェアすることで、「これだけ素敵な体験をしている自分」をさりげなくアピールする。あるいはブランド品を所有すること自体ではなく、そのブランド品を持つことで「自分は他者とは違う」と感じられる優越感に対して価値を見出す。
目的が自己満足から他者との差別化へとシフトし、「モノ」や「コト」の次なるステップである「マウント消費」という行動が生まれつつあるのである。
これは、資本主義経済における新たな潮流と言える。物質的な満足度が飽和状態に達した社会では、体験やその「見せ方」に重点が置かれ、人はそれに対して積極的にお金を払うようになる。
たとえば、高級ホテルに泊まる行為自体は「快適な滞在」を得るためのものだが、それだけでは満足できない消費者が増えている。彼ら/彼女らが真に求めているのは、そのホテルでの体験を「どれだけ特別なものとして他者に伝えられるか」「この体験をシェアすることで、どれだけ自分の価値を高められるか」という点にある。
上質なサービスを享受するだけではなく、「このホテルを選んだ自分のセンス」や「その体験を知っている自分という特別感」が重要な要素となっている。こうして消費行動は自己満足からステップアップし、「自分の価値を示すための手段」へと変化しつつあるのだ。
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