「自慢したいけれど嫌われたくない」現代人…令和のマウントゲームを制し、SNSにおける「真の勝者」になるために必要なスキルとは

「自慢したいけれど嫌われたくない」現代人…令和のマウントゲームを制し、SNSにおける「真の勝者」になるために必要なスキルとは
(※画像はイメージです/PIXTA)

マウントのスタイルは時代によって変化していますが、現在求められているのは露骨な自慢ではなく「いかにさりげなく自分を際立たせることができるか」だと話すのは、実業家、経営コンサルタントの勝木健太氏です。本記事では、勝木氏の著書『「マウント消費」の経済学』(小学館)より一部を抜粋・再編集して、「令和のマウント」について詳しく解説します。

「自慢したいけれど嫌われたくない」現代人の矛盾した心理

「マウント」のスタイルは時代の流れとともに大きく変化し、社会の空気を反映する鏡のような役割を果たしている。かつて主流だった「あの人より自分の方がすごい」「自分にはこんなことができる」といった露骨な自慢は、もはや時代遅れとなりつつある。

 

SNSが日常生活に深く浸透した現代では、あからさまな優越感のアピールはむしろ反感を招きやすく、場合によっては炎上のリスクが伴う。しかし、「他者と比較して自分の価値を確かめたい」という人間の根源的な欲求が消え去ることは決してない。

 

それどころか、この欲求は時代の洗練を受けた結果、より巧妙かつスタイリッシュな形で表現されるようになっている。これこそが令和の時代における「さりげなく自分を際立たせる」という新たなマウントのあり方なのである。

 

その極意は、直接的な自慢を避けながらも相手に対して自身の価値を自然に感じさせる点にある。たとえば、高級レストランでのディナーを投稿する際には「子供がどうしても食べたいと言うので仕方なく」といったコメントを添える。この「子供」という要素は巧妙なカモフラージュとして機能する。

 

一見すると家族思いで謙虚な姿勢に見えるが、その背後には、経済力や洗練されたライフスタイルをそれとなく見せつける意図が潜んでいる。写真を目にした人々は、無意識のうちに漂う特別感を感じ取り、投稿者のセンスやステータスを自然に認識する。この絶妙なバランス感覚こそが、さりげないマウントの真髄なのである。

 

旅行の投稿も同様である。「家族でリフレッシュできました」という控えめな一言とともに、高級リゾートのプールや青い海を背景にした写真が添えられる。この投稿には「私の生活は充実している」とは一言も書かれていないが、それでも写真そのものがそのメッセージを雄弁に物語っている。

 

このような事例は一見すると自然体を装いながらも、実際には緻密に計算された「自己表現のアート」とも言える産物だ。巧みに織り込まれた謙虚さと洗練された演出によって特別感が静かに伝わり、投稿者のライフスタイルやセンスを際立たせる。この絶妙な手法こそが、現代における洗練された自己表現の形態なのである。

 

この新時代のマウントスタイルの背景には、「自慢したいけれど嫌われたくない」という現代人の矛盾した心理がある。露骨なマウントが敬遠される一方で、さりげないマウントはそのリスクを回避しつつ、謙虚さと自己顕示を絶妙に両立させる手法として機能している。

 

この高度なスキルは、「マウントIQ」とでも呼ぶべき現代的な社会知性の一つとして捉えられる。見る人に不快感を与えず、上品に自分の価値をアピールするこの技術は、情報が溢れる現代社会において、ますます大切な要素となっている。

 

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※本連載は勝木健太氏の著書『「マウント消費」の経済学』(小学館)より一部を抜粋・再編集したものです。

「マウント消費」の経済学

「マウント消費」の経済学

勝木 健太

小学館

消費トレンドはモノ・コトからマウントへ 「こんな素敵な場所に旅行してきました」 「こんな美味しい料理を楽しみました」 「こんな特別な人と過ごしています」 SNSで頻繁に目にするこうした投稿。その背後には、多く…

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