「何気なく特別感を演出する技術」がある人がSNSの勝者に
SNSの成功例と失敗例は、「さりげなさ」の重要性を如実に示している。かつて一世を風靡した音声SNSの「Clubhouse」は、「特別な空間」を過剰に演出しすぎたせいで、「自分は特別だ」と強調する態度が反感を招き、急速に失速した。
一方で、フランス発のSNSの「BeReal」は自然体を追求しすぎた結果、特別感に欠け、広範な支持を得るには至っていない。これらの事例は、露骨さと平凡さの間にある絶妙なバランスこそが、令和時代のマウント成功の分水嶺であることを示している。
近年、さりげないマウントの手法はさらに高度化している。「自虐マウント」では、「仕事が忙しくて疲れた。でも、この景色には癒される」と疲労感を装いながらも高級スパや絶景を上手い具合にアピールする。
「感謝マウント」では「家族が素敵なディナーを準備してくれました。本当に感謝」と謙虚さを見せつつ、高級レストランの洗練されたテーブルセッティングをそれとなく映し出す。そして「困ったマウント」では、「急な誘いでこんなところに来てしまいました」と困惑を装いながらも、高級ホテルのスイートルームを何気なく披露する。
このような手法は、直接的な自慢を避けつつも特別感を巧みに伝える、極めて洗練された自己表現の技術と言える。
さりげないマウントは、「匂わせ」の究極形とも言える。優越感を背後に隠しながらも確実に伝え、背景に「子供」「趣味」「偶然」といったストーリー性をちりばめることで、スマートで控えめな印象を演出するのだ。この「さりげなさ」が現代のSNSにおいて、多くの共感を引き出すための秘訣である。
露骨さが目立った「Clubhouse」も、平凡さに終始した「BeReal」も時代の波に飲まれた今、何気なく特別感を演出するための技術がこれからは求められる。このスキルを身につけた者こそが、令和のマウントゲームを制し、SNSという舞台で輝きを放つ真の勝者となるのである。
勝木健太
文筆家、実業家、経営コンサルタント
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