「マウント欲求」を巧みに刺激するSNSのアルゴリズム
さらに、この「マウント欲求」を巧みに刺激する仕掛けとして、SNSのアルゴリズムが高度に働いている点も見逃せない。
私たちのスクリーンに映し出されるのは、SNS上で注目を集めたコンテンツばかりであり、それらは基本的に「羨望を誘うような輝かしい生活」の断片であることが多い。アルゴリズムは巧妙に「こんな生活を送っている人がいるが、あなたはどうなのか?」という無言のメッセージを繰り返し送り続けてくる。
結果として、私たちの価値観はいつしか「他者からどう見られるか」を軸に形成され、自身の行動が「他人に見せるに値するものかどうか」を基準に選び取るようになってしまうのだ。
そもそも人間は進化の過程で、他者と比べることを通じて群れの中での立ち位置を把握し、自らの安全性を確保してきた。「自分はどれほど強いのか」「どの程度認められているのか」を知ることは、生存のために極めて重要な行動だったのだ。
しかし、現代のテクノロジーはこの本能を過剰に刺激し、際限のないマウント競争の渦へと私たちを引きずり込んでいる。結果、私たちは操られるまま、終わりの見えない比較の連鎖に囚われてしまっているように思える。
さらに、比較の対象は物質的な所有を超え、生活のあらゆる側面に広がっている。「どんな場所に旅行したか」「どのような特別な体験をしたか」から、「どれほど個性的な生き方をしているか」「どのような価値観を持っているか」に至るまで、どんな些細なことでもだ。
たとえば、「今日は〇〇に行ってきた」「オーガニックな朝食を楽しみました」といった投稿は一見すると自然な報告に見える。
しかし、その裏には「こんなにも充実した生活を送っている自分」という優越感をほのめかす意図が含まれており、文脈次第では巧妙なマウントにもなり得る。こうした投稿が、SNSの特性を通じて比較と競争をさらに煽るのである。
「他者よりも優れていたい」という欲求は、一度芽生えると際限なく膨れ上がる。「もっと特別な体験をしなければならない」「さらに自分を高めなければならない」といったプレッシャーが次々と新たなマウント欲求を引き起こす。
結果として、私たちはテクノロジーによって絶え間ないマウント合戦を強いられ、自らを追い込む終わりなきレースに半ば強制的に参加させられている。このレースにはゴールは存在せず、ただ疲弊していくだけの無慈悲な構造が隠されている。
勝木健太
文筆家、実業家、経営コンサルタント
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