●日経平均は昨年8月安値の31,156円12銭を割り込み、節目の30,000円が意識されつつある。
●長期の下値支持線は4月末で30,500円台、PER13倍は約32,100円、12倍で約29,600円。
●関税交渉進展や経済対策などで、景気下振れは一時的、株価は目先不安定も、冷静さが必要。
日経平均は昨年8月安値の31,156円12銭を割り込み、節目の30,000円が意識されつつある
トランプ米大統領が4月2日に相互関税の導入を発表して以降、世界的な株安が続いています。4月4日の米国市場では、ダウ工業株30種平均が前日比2,231ドル07セント安で取引を終え、1日の下げ幅としては史上3番目の大きさを記録しました。また、ナスダック総合株価指数は、2024年12月中旬につけた直近最高値からの下落率が22.7%となり(終値ベース)、「弱気相場」入りとされる20%を超えました。
週明けの日経平均株価も大幅続落となり、依然として下げ止まりがみえない状況です。日経平均は2024年8月5日の取引時間中に31,156円12銭をつけ、これが直近安値の水準でしたが、すでにこの水準も割り込んできており、心理的な節目の30,000円が意識されつつあります。そこで、今回のレポートでは、テクニカル分析などで客観的な下値の目途を確認します。
長期の下値支持線は4月末で30,500円台、PER13倍は約32,100円、12倍で約29,600円
4月3日付レポートでも解説しましたが、日経平均は2012年以降、長期上昇トレンドが続いており、先週までの下落でもトレンドは不変です([図表1])。下値支持線が4月末に位置する水準は、30,500円台ですので、まずはこの辺りが下値の目安になりやすいと思われます。ただ、足元ではかなり狼狽売りも広がっているように見受けられ、下げの勢いが強いことから、日経平均は一時的にこの下値支持線を割り込むことも予想されます。
次に、日経平均の推移と株価収益率(PER、予想利益ベース)の推移に目を向けます([図表2])。日経平均が2024年8月に安値をつけた際、PERは13.02倍の水準まで切り下がり、その後、日経平均は上昇に転じました。現時点でPERが13倍まで低下すれば、日経平均は32,100円程度、12倍なら29,600円程度となり(予想利益はほぼ変わらずと仮定)、これらも下値の目途の1つと考えられます。
関税交渉進展や経済対策などで、景気下振れは一時的、株価は目先不安定も、冷静さが必要
米相互関税が予想以上に強い内容となり、金融市場は世界的な景気悪化を急速に織り込んでいる状況にあると思われます。弊社は世界経済について、目先はいったん下振れるものの米国と貿易相手国との関税引き下げに向けた交渉の進展や、各国の経済対策などにより、本格的な景気後退は回避できるとみています。そのため、日経平均は目先、不安定な相場が続いたとしても、徐々に冷静さを取り戻す可能性が高いと考えます。
市場の急速なリスクオフ(回避)の動きは、金融危機によるものではなく、金融システムは正常に機能しており、中央銀行による緊急の流動性供給も、非伝統的な金融政策も、急を要するものではありません。行き過ぎた関税の引き上げに起因する市場の混乱は、関税が引き下げ方向へ向かうことで収まっていく公算が大きく、落ち着いて状況を見守ることが必要と思われます。
※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米相互関税ショックに揺れる日経平均株価の下値目途【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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