俺が継ぐはずだったのに…嫁姑問題のもつれで家を飛び出した長男一家。〈財産評価額10億円超〉地主一家・次男の受難「こんなはずでは」【相続の専門家が解説】

俺が継ぐはずだったのに…嫁姑問題のもつれで家を飛び出した長男一家。〈財産評価額10億円超〉地主一家・次男の受難「こんなはずでは」【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

家族の歴史とともに受け継がれてきた土地や財産。しかし、その継承の過程で発生する感情的な衝突は、しばしば家族関係に深い亀裂を生じさせます。特に、跡継ぎが「予定通りではない」とき、あるいは「自分が選ばれなかった」とき、そこに生じる感情は非常に根深いものとなります。相談に来られた斉藤家(仮名)の実際の相続問題のケースを交えながら、跡継ぎ問題の本質と、その解決策について相続実務士の曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。

感情論が相続問題をこじらせる理由

相続に関する法律は明確ですが、家族間の感情はそう簡単に整理できるものではありません。特に「家を守るべき」「長男が継ぐべき」といった固定観念が根強い家庭では、法律だけでは解決できない問題が山積しています。

 

本来、相続は「財産の分け方」だけではなく、「家族の未来をどうするか」という視点を持つべきです。しかし、感情的な争いが激化すると、「自分が損をした」「あの人が得をした」といった視点に偏りがちです。その結果、本来スムーズに進むはずの手続きが滞り、家族関係の修復が困難になってしまいます。

 

では、このような問題をどのように解決すればよいのでしょうか?

感情の対処と解決策

感情の整理と対話の場を設ける 

相続問題が発生する前に、家族全員が話し合える場を設けることが重要です。遺産分割についての希望や、家族間の感情を事前に共有することで、相続時のトラブルを未然に防ぐことができます。

専門家の介入

感情論がこじれてしまった場合は、弁護士や相続実務士のような第三者に仲裁を依頼するのも有効です。専門家が客観的な視点からアドバイスをすることで、冷静な判断が可能となります。

遺言書の活用 

遺言書があれば、相続に関する争いを最小限に抑えることができます。ただし、一方的な内容ではなく、家族が納得できる形での作成が望まれます。

資産活用の視点を持つ

財産は活用してこそ意味があるものです。相続を機に、単なる財産分与ではなく、家族全体の利益を考えた資産運用の方法を模索することが大切です。


専門家のサポートが必要

相続問題は、法律だけでなく、家族の感情や価値観が大きく影響します。跡継ぎが自分でないと分かったとき、あるいは予定通りでないとき、家族内での対立は避けられないこともあります。しかし、感情論だけで問題を進めると、最終的には全員が損をする結果になりかねません。

 

相続は「争続」ではなく、「家族の未来を築く機会」と捉えることが重要です。そのためには、冷静な対話、専門家の介入、そして家族全体の利益を考えた資産活用が求められます。

 

斉藤家の事例のように、深い感情のしこりが残ることもありますが、最終的に家族が納得できる形で解決策を見出すことができれば、それが最善の相続となるのではないでしょうか。

まとめ 土地持ち資産家における「跡継ぎ」制度の是非

肯定的な側面

土地持ち資産家では、代々受け継がれてきた土地や家業を守ることが重要視されます。そのため、長男や長女、あるいは養子を「跡継ぎ」として育て、財産の維持・管理を任せる慣習が根付いています。この仕組みにより、土地の分散を防ぎ、資産の価値を維持することが可能となります。また、家業がある場合は、一貫した経営方針を貫くことができ、地域社会との関係も維持しやすいといえます。

 

さらに、跡継ぎとして育てられることで、責任感や経営者としての意識が早くから培われる点もメリットの一つだといえます。財産の管理には専門的な知識や経験が求められるため、計画的な承継がなされることで、スムーズな世代交代が可能になるのです。

否定的な側面

一方で、跡継ぎ制度にはいくつかの問題点もあります。まず、本人の適性が考慮されず、「長男だから」「長女だから」といった理由だけで後継者に指名されるケースが多いのが現状です。その結果、資産を適切に管理できず、むしろ家業が衰退する事態を招くこともあることでしょう。

 

また、跡継ぎを強要されることで、本人の自由な人生設計が制限される場合があるかもしれません。自分の夢や適性とは異なる道を歩まざるを得ず、精神的な負担が大きくなることも少なくないといえます。特に現代では、多様な生き方が求められる時代となり、「家を守るために生きる」という価値観に縛られることへの反発も増えているかもしれません。

 

結論

土地持ち資産家における跡継ぎ制度は、資産の維持や経営の継続において一定の合理性がありますが、時代の変化に合わせて柔軟に対応する必要があります。適性や本人の意思を尊重し、専門家のアドバイスを受けながら、より合理的な資産承継の方法を模索することが求められる時代となりました。家族全体での話し合いや、第三者の意見を取り入れることで、より良い跡継ぎのあり方を考えていくべきではないでしょうか。


        

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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