マンションの管理組合に関わっていると、思いもよらない問題に直面することがあります。その一つが「管理費・修繕積立金の滞納」の問題です。500世帯規模の大規模マンションの管理組合で理事長を務めたファイナンシャルトレーナーFP事務所の森逸行氏は、マンション管理組合の経験の中で、意外にも「経済的に余裕があるように見える世帯ほど、管理費を滞納するケースがある」ことを知りました。本稿では、分譲マンションの管理組合で実際に起きた事例をもとに、居住者によるトラブルを防ぐための具体的な対策について、同氏が解説します。
高級マンションの“見えない問題”
全身ブランド品に身を包みながら1年以上の滞納
ある世帯の話です。40代の夫婦は入居当初からベンツを所有し、ハイブランドのバッグやアクセサリーを身に着け、いかにもお金持ちの雰囲気を出していました。エントランスですれ違うほかの住民たちも「裕福な家庭なんだろうな」と思っていたはずです。
しかし、管理会社による収支報告で明かされたのは衝撃の事実。なんと、彼らは1年以上、管理費と修繕積立金を未納にしているというのです。毎月の管理費と修繕積立金を合算すると100万円近い金額。お金がないようにはみえないのに、なぜなのでしょうか?
見た目ではわからない“管理費未納”問題。そんな彼らの振る舞いは、これだけにとどまりませんでした。
滞納世帯が“騒音被害”を主張し、上階住民を追い出す
さらに驚いたのは、この滞納世帯が「上の階の足音がうるさい」と管理組合に繰り返し苦情を申し立てていたことです。
管理組合としても、住民間の騒音トラブルには直接の関与はしないものの、できる範囲で対応する必要があります。そのため、上階の世帯に注意喚起を行い、ゴムマットを敷くなどの防音対策を検討してもらうことに。
しかし滞納世帯は、それだけでは納得せず、上階の世帯に対して改善を求め続けました。その結果、上階の世帯は精神的な負担を感じ、最終的に引っ越しを選ばざるを得なくなったのです。
管理費を未納にしながらも管理組合には強く要望を出し、結果として上階の住民を退去に追い込むという状況が生まれてしまいました。管理組合としては、対応の難しさを痛感した出来事です。
ファイナンシャルトレーナーFP事務所 代表
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)
外務員二種|二級ファイナンシャル・プランニング技能士|AFP|住宅ローンアドバイザー
1978年千葉県生まれ。生命保険会社での経験を経て、独立系ファイナンシャルプランナーとして活動。
住宅購入、教育資金、老後資金準備など、ライフプランに基づいた「家計の見える化」支援を行っている。
自身の住宅購入や子育ての経験を踏まえた、実生活に即したリアルなアドバイスを強みとし、特に住宅ローンや資産形成を得意分野としている。個人のお客様に加え、中小企業経営者を中心に、資産形成の支援も行っている。地域ではマンション管理組合に長く参画し、災害対策や修繕積立などの課題にも精通。その実践的な知識を活かし、メディア寄稿やセミナー講師としても活動中。
現在は吉祥寺・立川を拠点に年間約100件の相談を受け、Google口コミや大手FPマッチングサイトでも高い評価を獲得している。
ファイナンシャルトレーナーFP事務所
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