共働き夫婦がうなされる、マンションの悪夢
東京郊外に4,800万円の新築マンションを購入して8年。松田恵里さん(仮名/48歳)は、夫(46歳)と10歳の子どもと暮らす、いわゆる共働きの典型的な「マンション家庭」です。
購入当時、選んだのは変動金利0.7%。「この金利なら安心。東京にしては高くない価格帯だし、マンションなら維持費もそこまでかからないはず」そう信じていました。
しかし、8年後のいま、松田さんはある言葉を繰り返すようになっていました。
「思っていたより悪いや……」「マンション、よくない……」
その理由は“住宅ローンそのもの”ではありませんでした。
「ローンより、これからのほうが怖いんです」後悔の理由
現在、変動金利は0.7%から1.2%へ上昇。返済額は月1万3,000円ほど増えました。しかし、共働きの松田家にとって、それは家計全体を揺るがすほどではありません。
松田さんが本当に恐れていたのは、住宅ローン以外の、毎月かかり続ける「固定費」の存在です。
修繕積立金:月1万3,000円
管理費:月1万1,000円
駐車場・駐輪場:月9,000円
合計3万3,000円
これは“完済のない費用”であり、老後もずっと続きます。家計簿をみつめながら、松田さんはつぶやきました。
「こんなに負担なんて思わなかった……思っていたより悪いよ」
マンションは「買った瞬間」が最も若い状態で、そこから老朽化とともにコストが上がっていく――。そんな冷徹な現実に、ようやく気づいたのです。
修繕積立金は“ほぼ確実に上がる”…国交省も示す現実
松田さんのマンションでは、すでに管理組合で「段階値上げ」が検討されていました。
これは特別なケースではありません。国土交通省の調査や大手管理会社のデータでは、築10〜15年を迎えるころに修繕積立金の見直し(増額)が必要となるマンションが多数を占めることが示されています。さらに複数の民間調査では、築15年超のマンションの“6〜7割”が実際に積立金を増額したという報告があります。
これを聞いた松田さんは、思わず漏らしました。
「マンション、よくないね……。こんなに値上がるとは思ってなかった……」
修繕積立金は、昨今の建材費や施工費、資材高騰の影響も受け、「上がることはあっても、下がることはほぼない」費用。その構造自体が、老後の家計を圧迫する最大のリスクなのです。
