小売り関連が大幅低下…寒波・大雪の影響か
25年2月の「景気ウォッチャー調査」で、現状判断DI(季節調整値)は前月差▲3.0ポイントと3ヵ月ぶりに低下し45.6となりました。22年7月43.6以来の低水準です。
内訳をみると、家計動向関連DIは、住宅関連が上昇したものの、ほかの分野は低下したことから前月差が低下しました。なかでも小売り関連が前月差▲4.8ポイントと大きく低下。寒波や大雪の影響で買い物をする機会が減少したことなどが響いているようです。衣料品専門店の現状判断DI(原数値)は37.1と、23年1月の37.1以来の低水準になりました。
企業動向関連DIは、製造業が前月差▲0.8ポイントと小幅に低下したのに対し、非製造業は前月差▲2.3ポイントと大きく低下しました。一方、雇用関連DIは前月差+2.0ポイントと上昇しました。
2月の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差1.4ポイント低下の46.6。また、原数値でみると、現状判断DIは前月差0.4ポイント低下の45.1となり、先行き判断DIは前月差0.5ポイント上昇の48.4となりました。季節調整値に比べ、原数値のほうが、こじっかりとした数字になっています。
景気の基調判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」と1月までの「景気は緩やかな回復基調が続いている」から10ヵ月ぶりに引き下げられました。先行きについては、「緩やかな回復が続くとみているものの、引き続き価格上昇の影響等に対する懸念がみられる」と1月と同じ判断でした。
価格or物価関連コメント低水準で増加…全体の足を引っ張る
2月「価格or物価」関連現状判断DIは38.5で、23年1月の35.1以来2年ぶりの低い水準の38.4に悪化した25年1月から0.1ポイント上昇しました。現状判断のコメント数は290名で、12月より53人も増加し280名になった1月からさらに10名増えました。一方、2月「価格or物価」関連先行き判断DIは40.7で1月の40.5から0.2ポイント上昇しました。こちらは3ヵ月連続緩やかな上昇です。
しかし、先行き判断のコメント数は400名で1月375名より25人増加、23年8月の404人以来の多さになりました。指数はやや改善しても低水準でコメント数が増えたため、現状・先行きとも前月との寄与度差でみて全体の判断DIの足を引っ張っています。
不安を煽るトランプ関税のニュース
トランプ米国大統領が就任したあと、毎日のように「関税」に関するニュースが流れるなか、実際にどこまで実施するかという見方に関し、景気ウォッチャーの受け止め方が悪い方向に動いている感が強い状況です。「関税」関連先行き判断DIは、2月は35.7と1月の41.1から5.4ポイント低下しました。コメント数は35名で、1月の14名から2.5倍になりました。トランプ米国大統領就任前の12月に比べ5倍になっています。
「気温」関連現状判断DI…最強寒波の影響は?
24年は暑さが厳しい期間が長く続いたことで、8月から10月まで3ヵ月連続で「気温」関連現状判断DIが40台に悪化し、全体の現状判断DIの悪化要因になっていました。気温が落ち着いた11月以降、25年1月までは「気温」関連現状判断DIは3ヵ月連続で、景気判断の分岐点50超でした。
しかし、2月の「気温」関連現状判断DIは39.1と4ヵ月ぶりの50割れ。しかも40割れという低水準に。2月は上旬後半と中旬終わりから下旬前半にかけて、強い冬型の気圧配置がそれぞれ1週間程度持続したため、強い寒気が流れ込み日本海側を中心に大雪となったところがありました。月平均気温は、強い寒気の影響を受けた西日本と沖縄・奄美でかなり低く、一方、低気圧の影響で暖かい空気が流れ込む時期があった北日本では高くなりました。
2月で「寒波」関連現状判断DIは37.2、コメント数は39名。「大雪」関連現状判断DIは36.0、コメント数は25名でした。最強寒波の影響で、景気ウォッチャーの景況感が悪化したことがわかります。ただし、この影響は一過性とみる向きが多いようで、「気温」関連先行き判断DIは62.5、「寒波」関連先行き判断DIは64.3と60台の高水準になっています。
「インバウンド」はプラス効果が常態化も、変わらず景気を下支え
1月の「外国人orインバウンド」関連の現状判断DIは55.9、同先行き判断DIは55.6で、どちらも12月の60台から揃って50台に低下していました。2月の「外国人orインバウンド」関連の現状判断DIは53.6、同先行き判断DIは59.5で、どちらも1月と同じ50台でした。インバウンドのプラス効果は大きいものの、だんだん常態化してきていることもあって高いDIは出にくくなっているようです。
それでも、「外国人orインバウンド」関連現状判断DIは22年5月から景気判断の分岐点50超が維持されていて、全体の現状判断DIを支える要因になっています。また、現状判断のコメント数は、現状が98名と24年4月の113名以来の高水準になりました。
「万博」への関心がじわじわ高まる
大阪・関西万博がいよいよ4月に開幕します。「景気ウォッチャー調査」の先行き判断でのコメント数は11月までは1ケタで関心の薄さが気懸かりでしたが、12月で10名、1月で36名、2月では45名まで増加してきています。「万博」関連先行き判断DIは63.3と3ヵ月連続で60台の高水準になっています。
「花粉」「桜」によって見込める需要
2月の「花粉」に関する先行き判断コメント数は4名と少ないものの、「花粉」関連先行き判断DIは68.8と高水準でした。花粉の本格飛散シーズンが近いので、「新生活での行動範囲において、外食する店舗や相手が定まるまでは、コンビニでの中食需要が高まると期待している。また、春休みになり、土産など高単価商材の売上や、花粉飛散が本格化することでマスクやティッシュなど外出先での急な需要での利用も見込める」という南関東のコンビニ・エリア担当のコメントがありました。
2月の「桜」に関する先行き判断コメント数は10名になりました。「桜」関連先行き判断DIは75.0と高水準でした。「桜シーズン以降、国内外ともに団体および個人の受注が好調であり、前年を上回る予測をしている。また、全体的に単価も前年を上回る水準で推移している」という中国地方の都市型ホテル・宿泊担当のコメントがありました。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
預金中心の人必見!資産の目減りに気づいていますか?
“新NISA”を活用したインフレ時代の「資産保全」
>>4/3(木)LIVE配信<<