物価が上がると暮らし向きは悪化
内閣府「消費者マインドアンケート調査」の暮らし向き判断DIと物価上昇判断DIの相関係数は、16年9月から21年8月までの最初の5年間は0.01と無相関でした。しかし、21年9月から25年3月までの最近の3年6ヵ間はマイナス0.69と逆相関になっています。現状は、高い物価見通しが暮らし向き判断の足枷になっている状況です。
物価上昇の見通しは依然高水準
物価上昇判断DIは、16年9月から25年3月の全調査期間平均は77.1、標準偏差8.3、最高は23年6月90.7、最低は21年2月の60.0です。調査開始から22年1月までは60台・70台で安定推移していましたが、ロシアがウクライナ侵攻した月の22年2月調査以降物価上昇判断DIは80台・90台で、物価が上昇するという見通しが強まりました。
22年10月に90.4をつけたあと、80台後半の高水準での推移が続き、23年は6月の90.7をつけました。そこから振幅をともないつつ24年9月の80.3まで一旦低下しましたが、反転上昇傾向になり、25年2月に90.2と20ヵ月ぶりの90台を記録しました。25年3月の物価上昇判断DIは86.8と2月からは鈍化するも、平均+標準偏差の85.4を上回る高水準です。
「米類」は5ヵ月連続で過去最大更新
全国消費者物価指数は22年から24年まで3年連続で「食料」と食料の中の「生鮮食品」の前年比がプラスの伸び率になり、「総合」「生鮮食品除く総合」の伸び率を上回りました。異常気象の影響もあり、代わる代わる何某かの食品が高騰する状況です。3年連続の高騰ともなると、天候要因は一時的な要因ではなくなっています。24年では「米類」が2年連続前年比上昇ですが、23年の+3.8%から24年は+27.7%と大幅な伸び率になりました。
全国消費者物価指数25年2月の「食料」の前年同月比は+7.6%の上昇、「米類」は同+80.9%、「生鮮食品」は同+18.8%の高い伸び率です。「米類」は需給の引き締まりや生産コストの上乗せが続き、24年10月に+58.9%になり過去最大だった75年9月の+49.5%を更新したのち、5ヵ月連続で過去最大を更新しています。2月の前年同月比は、キャベツ+130.5%、うるち米(コシヒカリを除く)+81.4%、みかん+37.5%、チョコレート+30.4%、コーヒー豆+22.9%の上昇で、多岐にわたり高騰しています。
3月10日から12日にかけて実施した政府備蓄米の買戻し条件付売渡しの入札のあとでも、コメの値段が高いままであることに加え、「電気・ガス料金負担軽減支援事業」による物価押し下げ効果が4月以降なくなります。政治の世界では商品券問題などが優先議題で、目先の即効性ある物価対策について、政治はなにもしてくれていないと思う人が多いとみられ、消費者マインドが悪化している状況です。
なお、現時点でコメや生鮮食品、食料加工品の価格上昇への対策としてだけで、日銀が政策金利を引き上げることは慎重に判断する必要があると思われます。
物価見通しの高止まりで、暮らし向き判断は急落
暮らし向き判断DIの16年9月から25年3月の全調査期間平均は36.8、標準偏差7.0。最高は17年1月48.9、最低はコロナ禍の20年4月20.7です。
暮らし向き判断DIは、24年10月から25年3月の6ヵ月間は、物価見通し判断DIが84以上の高水準に上昇したことから、低水準の20台・30台になりました。24年9月の41.0を直近の極大点として、振幅を伴いつつも、もたついた動きになっています。25年3月は26.5で、2月の35.8から低下しました。25年3月の暮らし向き判断DIは平均36.8から標準偏差7.0を引いた29.8を下回ります。23年11月の22.5以来の、過去6番目に低い数字になりました。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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